祇園で火災を起こした三つ星割烹の「京都ならでは」の悲劇

ややこしい問題が次々と…
週刊現代 プロフィール

近隣住民の冷たい目

千花のあった場所は、祇園の中でも特別な一等地だった。

「あのあたりは、『祇園町』とよばれる祇園のなかでも格段にいい場所で、最新の公示地価は1平方メートルあたり195万円にもなります。坪単価に換算すれば、1坪約645万円。

とりわけ、駅近でありながら、路地を入って隠れ家感を演出できる千花さんの立地は絶妙でした」(近隣の不動産業者)

そんな歴史ある名店から立ち上った炎。

悲劇は、開店前に起きた。男性従業員が、1階にある厨房で換気ダクトにこびりついた油汚れを溶かそうとバーナーの炎を当てている最中に、火が油に燃え移ったという。

この出火原因を聞いた近隣の飲食店店主の男性は怒気をはらんだ口調で言う。

「油汚れの始末にガスバーナーを使うなんて、何を考えていたんですかね。汚れがひどくなったら丁寧にふいて落とすのは常識でしょう。油がついたところに火を当てたらどうなるか、子どもでもわかる話です。

千花さんも先代の大旦那のときは厳しくて有名やった。大旦那だったらそんな『手抜き』は許さんかったんと違いますか。

息子さんの代になってから、いろんなとこに露出してハデに商売されてましたけど、お弟子さんの教育とか、いろんなことをおろそかにされてたんとちゃいますか」

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この店主に限らず、千花の周囲で取材すると、聞こえてくる声は総じて冷ややかなものだった。

「まだ煙の臭いが残っていて、気になって気になって眠れませんわ。火事が起きた日は、土曜の午後で書き入れ時だったのに、店を開けられなかった。この辺の店はみんなシャッターを下ろしてましたよ。

その後も、客足が減っていてホントに迷惑してます。焼くのは魚だけにしてほしいわ」(近隣の小売店の男性店主)

火が消し止められてから3日後、千花へと続く路地には「立入禁止」と書かれた張り紙がはられ、鉄格子の扉が閉じられている。

「店の中は屋根が崩れ落ちて、自慢のカウンターも完全に焼け落ちてしまったそうですわ。延焼した隣のアパートももう使い物にはならないでしょうな」(前出・小売店の男性店主)

 

木造の建物がひしめく京都の花街では、一度火が起これば、あっという間に周囲の建物に燃え移る。そのうえ、路地が多く消防車が入りにくいため、消火活動は困難をきわめる。

'16年にも、祇園と目と鼻の先の先斗町で、木造2階建ての飲食店が火元となる火事が発生。延べ135平方メートルを焼いている。

この店を訪れていた客の女性が言う。

「じつは、ミシュランに載るようになったころから、千花さんは外国からのお客さんばっかりになり、土地の人間はよう寄りつかんのですわ。

我々のあいだでは祇園四条の『さか本』とか、お弟子さんがやっているお店のほうがよっぽど評判がいい。

そんなことを知ってか知らずか、千花さんは『ミシュランガイド掲載』と書いた、たいそう品の良いホームページを作られはって、ずいぶん話題になってましたよ。あちこちからちやほやされて、浮かれてたんと違いますかね」