photo by the White House

「米朝首脳会談」実現しても、非核化には実際こんなに時間がかかる

長期化はハナから覚悟すべきだ

それでも米朝とも首脳会談が必要

米朝首脳会談の日程が一旦決まった後、相変わらず「金正恩・トランプ劇場」が世界のメディアを連日にぎわせつづけている。あらためて、この迷走の2週間の出来事を整理してみよう。

・2018年5月10日、ドナルド・トランプ米大統領は、北朝鮮の金正恩委員長との首脳会談を6月12日にシンガポールで開くと発表。
・翌5月11日に始まった米韓合同軍事演習に北朝鮮は反発。
・16日、北朝鮮の金桂冠第1外務次官は、米国が向こう見ずな発言をし、悪意を隠し持っていると強く非難し、米朝会談の延期を示唆。北朝鮮が主張する「段階的非核化」を拒否するジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を名指しで批判。
・21日、マイク・ペンス副大統領は、テレビ・インタビューで金委員長に対して、「トランプ米大統領を手玉に取れると考えるのは大きな過ち」と述べ、リビアの最高指導者・故ムアマル・カダフィ大佐が大量破壊兵器を放棄した後、内戦で殺害されたことに言及。北朝鮮も同じ命運をたどる可能性があると指摘。
・24日、北朝鮮の崔善姫外務次官は、ペンス米副大統領を「無知でばかげている」と厳しく非難し、会談中止の可能性に言及。外交が失敗した場合には「核による最終決戦」の可能性を警告。
・同じく24日、北朝鮮は核実験場を爆破。しかし。その直後、トランプ大統領は会談中止を金委員長に公式書簡で伝達。
・25日、金桂冠第1外務次官は、「一方的に会談中止を発表した」のは「非常に遺憾」、「米国側に時間と機会を与える用意がある」との談話を発表。
・直後、トランプ大統領は、「とてもよい声明だ」と評価、米朝首脳会談は「まだ来月12日もありうる」と発言。
・ 26日、金委員長は急遽、韓国の文在寅大統領と南北首脳会談を行い、米朝首脳会談をシンガポールで予定通りに実現することに確固たる意思を示した。
・26日夜(日本時間で27日午前)、トランプ大統領は、米朝首脳会談を予定通りシンガポールで6月12日に開催することを検討、と発言。
 

改めて振り返ると、米朝が相互に罵りあううちに、互いのレトリックが激化、仲違いが決定的になったかと思ったら、すぐにまた仲直りの兆しが出てきた、という感じだ。本稿が公開されるまでに、さらに何か新たな進展があるのかもしれない。

ただ、変動の大きさに戸惑わされがちだが、米朝会談に向けたプロセスの基底にある「構造的トレンド」をしっかりと見据えなければならない。

その「構造的トレンド」とは、トランプ大統領も金委員長も、お互いに首脳会談を強く欲しており、米朝関係改善を相互利益とみていることである。

「偉業」ショーが必要な米大統領

4月下旬~5月上旬の間、私はアメリカとカナダを訪問する機会を得た。北朝鮮問題について両国の政府関係者や専門家と議論するためだ。海外渡航中、朝鮮半島情勢について最新のニュースを得るため、連日、CNNなどのニュース番組を見ていた。が、ほどなく吐き気がしてきた。

早朝から真夜中まで伝えられるニュースの大半が、トランプ大統領のスキャンダル話ばかりだったのである。アメリカ大統領選挙に介入したロシア政府と、トランプ氏を含む選挙陣営幹部が共謀した疑惑。トランプ氏と不倫関係にあったポルノ女優への口止め料支払いにトランプ氏自身が関与した疑惑。

トランプ大統領は、これらの疑惑の捜査にかかわる司法省やFBIの責任者や特別検察官を公然と脅迫し個人攻撃で反撃しており、その反撃の度合いは激化する一方だ。批判的なメディアを「フェイク・ニュース」と罵倒し倒し、それがまたテレビニュースで新たな議論の火種となる……。FOXニュースなどの一部の熱狂的なトランプ支持のメディアは大統領を盲目的なまでに支持している。

北朝鮮関係のニュースは確かに流されていたが、まれであった。

これが、米連邦議会の中間選挙を今年秋に控えるトランプ大統領を巡る状況だ。トランプ氏に関するグッド・ニュースは、一部のメディアを除いてあまり放送されない。なので、ホワイトハウスや大統領本人は、ほんのちょっとしたことでも、「トランプ大統領の偉大な実績!」と自画自賛する。

6月12日にシンガポールで開催予定されている米朝首脳会談も、トランプ氏にとっては「偉業」の舞台として想定されているのは間違いない。北朝鮮との「ディール・メーキング」も、トランプ氏にとっては自らの実績を誇示するためのツールのようだ。他の大統領は誰も果しえなかった「偉業」として誇示したいとの思いが、彼の発言や身振り素振りに表出している。

5月9日の午前3時頃、北朝鮮が釈放した米国人捕虜3名が米本土に到着するや否や、トランプ大統領やペンス副大統領、ポンペイオ国務長官らが真夜中の午前3時過ぎにも関わらず、空港で出迎えた。

ホワイトハウスはすぐにその様子を短編映画にまとめて宣伝した。大統領と元捕虜3名らが一緒に歩くシーンが、劇音楽とともにスローモーションで映し出された。スキャンダルまみれの連日から何とか起死回生を模索するホワイトハウスの必死さが画面いっぱいにあふれ出ている。