日大アメフト問題で分かった「組織を殺す広報」「生かす広報」の差

あれは、いわば自爆だ
落合 絵美 プロフィール

関学大は危なげない対応

日本大学の一連の記者会見を受けて、関西学院大アメフト部も26日に記者会見を行いましたが、これは非の打ち所のない内容でした。

会見早々、集まった報道機関へのお礼に続き、記者会見の目的と当日の流れを丁寧に説明することで進行をスムーズにさせました。また、冒頭の発言から、会場に入る際に不審者の侵入を避けるために手荷物チェックをしたことも伺えます。

記者の質疑応答に対しても、約1時間半の長時間の対応にもかかわらず丁寧に真摯に回答していました。関西学院大アメフト部としての見解だけでなく、鳥内監督、小野ディレクターの個人としての見解もバランスよく語られ、聞いていて納得感のある内容でした。

ちなみに関西学院大アメフト部の小野ディレクターは、関西学院大アメフト部OBでもあり、新聞記者の経歴もある人物です。大学内で広報室を担当していた時期もあり、本件に関する広報対応のレベルの高さも納得です。

 

計り知れない「広報」の影響力

「あなたの発言で日大のブランドが落ちてしまうかもしれませんよ」
「落ちません!」

というのは23日の会見での報道関係者と日大広報担当者のやり取りですが、残念ながら日大のブランドは落ちてしまいました。それは、広報部の対応がお粗末すぎたためだと言わざるを得ません。日大という生命体の顔であり声である広報部のありえない文書や発言が、組織全体を汚してしまったのです。

広報という職業は、通常はそこまで注目される部署ではありません。会社によっては、閑職のように扱うケースも見受けます。しかし、広報の影響力は計り知れないものがあるということを最悪の形で表してしまったのが、本件です。

なお、お断りしておくと、わたしはPRコンサルタントの立場から本件を解説することを意図していて、日本大学やその関係者を貶したり、不祥事を娯楽として消費する気はありません。出身地は日本大学芸術学部のすぐそばで、愛着すら感じています。

また、私自身、学生時代に母校で「スーパーフリー事件」という痛ましい事件がおき、在校生として世間から厳しいバッシングを受けた経験もあります。当事者のみならず、関係者が受けた心の傷は計り知れないものがあると思います。

日大広報部には、ぜひ今後の情報発信に誠意を持って対応していただき、一刻も早い事件解明とブランド回復が実現されればと祈っています。

伝わらなければ、意味がない

最後に、少しだけ私の話させてください。

私は、PR業界に来る前にビジネス書の出版社に約10年勤務していました。経営企画などいくつかの部署を経て編集者になりましたが、その後1年もしないでPR会社への転職を決意しました。なぜか。

短い編集者時代に、必死に企画して徹夜で編集した本が、3ヶ月もすると山のように返品となって戻ってくることを経験しました。

単純に私の企画力がなかったというのもあるでしょう。しかし、自社も含めて多くの出版社が出版不況から自転車操業状態に追い込まれ、丁寧にマーケティング活動をして企画を立てる余裕もなければ、完成した書籍の特徴や魅力を適切に情報発信する余裕もありませんでした。

ある晩、誰もいないオフィスで編集中の原稿と向い合いながら、私は唐突に気づいたのです。「せっかく良いものがあっても、伝わらなければ犬死だ」と。そこから私はPR会社への転職を経て本年独立し、企業の魅力を発信する活動を続けています。

どの組織にも、素晴らしい魅力が隠れています。しかし、それが正しく発信されていなければ、その組織は誤解されます。関係する多くの人々を傷つけます。

組織を活かすも殺すも、「広報」次第なのです。