日大アメフト問題で分かった「組織を殺す広報」「生かす広報」の差

あれは、いわば自爆だ
落合 絵美 プロフィール

世間の感情を逆なでした「壊滅的」記者会見

こうして世間からの目が厳しくなる中で開かれた、監督・コーチによる記者会見のお粗末さはご存知の通りです。内容のまずさは各種報道で繰り返し語られていますので広報の目線に絞ると、謝罪する側の態度とは思えない不遜さ、司会を務めた日大広報部の仕切りの悪さ。

後日、「司会者が苛立ったのは、テレビが局ごとではなく番組ごとに質問をしてきたから」という発言が出ましたが、むしろ局ごとにマイクを集約するなんて広報部の常識では考えられません。

また、会見する監督、コーチの後ろを度々報道関係社のカメラが通過していましたが、通常の会見ではよほどの理由がない限り背中を報道関係者に見せることはしません。手元の資料が後ろから報道に丸見えになるからです。

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そもそもこの記者会見、始まる時点で日大は負けていました。

広報の業界では不祥事に対する謝罪会見は「金曜夜」と決まっています。日中のニュース番組で生中継されることもありませんし、翌・土日はメディアの動きも遅くなります。不都合な話題の拡散防止になるのです。

ただし、緊急性がある場合は、曜日に限らず夜に行います。広報のセオリー的に見れば、この会見は正解です。

ですが、当該学生は、「単身で・日中に」記者会見を開き、多くのメディア・聴衆の目にさらされることを選びました。

学生の堂々とした姿と対してヒール役になりつつあった大学側は、いくら夜の会見が広報のセオリー通りであっても、学生と同じ条件で会見を開かなければ「批判を恐れた」と思われて印象を落とすのは容易に想像がつきます。

しかし、ご存知の通り、会見は夜開かれ、人目を避けるつもりが大炎上しました。

 

遅すぎた大塚学長の会見には不審者も乱入

こうして、誤った広報対応のせいで日大全体が悪のようなイメージが浸透してしまった中、25日に大塚吉兵衛学長の記者会見が開かれました。

冒頭から、怪我をした学生、当該学生、在校生とその父兄、そして日大OGOBに対し謝罪し、約12万人の生徒を大学として守る姿勢を明確にしたのは、先述の東大広報文書に通じるものがあります。司会もスムーズでした。

しかし、あまりにも遅すぎました。この記者会見の日大側の意図は、「当該学生一人に問題を背負わせるのではなく、大学として謝罪し解明・改善に真摯に対処する」ことの表明かと思いますが、これは23日の会見の前に行うべきものでした。今更の謝罪と新しい情報のない記者会見は、「なんのための会見だったかわからない内容」との見方が大多数です。

しかも、会見の冒頭で不審者の乱入騒動が発生しました。記者会見では受付で報道関係者であることを確認するのが当たり前で、今回のように世間の注目が高い事案の場合は、不審者の乱入を防ぐために名刺を複数枚確認するなどします。にもかかわらずの不審者乱入は、広報部が管理する受付に不備があったと言わざるを得ません。

また、今回の進行の仕切りはとても理想的でしたが、学長の質疑応答では聴衆の感情を逆なでるシーンも散見されました。一例を挙げると、昨今の学生の動向を批判したとも取れない発言や、やや浅めのお辞儀など。

おそらく、今回の会見を仕切った人物は、会見前に学長に対して必要最低限のメディアトレーニング(報道機関の前に立つ際の適切な言動や見せ方の研修)をしたことでしょう。しかし、長時間の会見でボロが出てしまったと言わざるを得ません。

ちなみに大企業の場合、広報部が平時から代表者にメディアトレーニングを受けさせていて、急な記者会見でも万全の対応ができるように備えていることが一般的です。