小泉純一郎と野党の脱原発連合を演出した「角栄の愛弟子」

新潟県知事選・深層レポート
常井 健一 プロフィール

「平成政治の総決算」

それにしても、なぜ中村は山﨑を介して、元首相に「応援要請」をしたのだろうか。

「新潟県知事選で野党が勝てば、現政権はもたなくなる」

私の問いかけに、中村はこう短く答えた。マスコミ嫌いの彼が胸の内に秘めている真意を読み解くには、「週刊現代」による昨年のインタビュー記事がヒントになりそうだ。

「国民目線で、安倍氏のやっていることは許せないといったとき、行動を起こせる人がベテラン国会議員のなかにいないといけない。私は小沢一郎にも向かっていったし、権力を笠に着て政治を混乱させるような事態には、抵抗していく」(小川匡則、「『日本一選挙に強い』政治家・中村喜四郎という生き方」)

こう話した後の今年1月、一匹狼を貫いてきた中村は、岡田克也が中心の衆院会派「無所属の会」に入会した。中村にとって岡田は竹下派時代に可愛がった弟分であり、今でも定期的に食事をするほど昵懇である。5月に岡田が属する民進党が解党されてからも、中村は従来のように完全無所属に回帰せず、岡田の会派にとどまることを決めた。

 

今の政界では「終わった男」と見なされている中村。だが、四半世紀ぶりに表舞台に姿を見せるようになった最近の様子について、彼をよく知る野党議員は期待を込める。

「いよいよ完全復活に向けて、本格的に動き出すのでは」

中村がインタビューで話した通り、現在、安倍に絡む不祥事が続出し、内閣支持率が低迷しているのにもかかわらず、「行動を起こせる人」は与野党を見ても皆無。唯一、引退した小泉が、雑誌メディアを通じて安倍に物申している。4月には記者団の前で、安倍三選は「難しいだろうな」とまで踏み込んで発言した。

一方、今年に入ってから原発ゼロ法案の草案を練り、立憲民主党と連携。共産党委員長・志位和夫のことを行きつけの小料理屋に招き、原発ゼロに向けた共闘を誓うと同時に、共通の趣味であるクラシック音楽の話題を通じて意気投合した。4月18日には、前出の山﨑、武部勤、二階俊博、小池百合子を同じ店に集め、「小泉政権同窓会」と称して安倍政権の「今」についても懇談。秋の総裁選後には、再び同じメンバーで会合を持つことを約束している。

党内野党的な立場を決め込む息子・進次郎の言動はさておき、今の小泉の「ウイング」は途轍もなく広い。時と場合によって敵と味方が入り乱れた昔の政界を知る中村には、小泉の動きにピンと来たのだろう。目論見通り、新潟での小泉は、山﨑を介しての中村の「腹案」を受け入れた。

小泉からすれば、その判断は原発ゼロ運動の延長線上に過ぎなかったが、中村にとってはちょっと意味合いが違いそうだ。筆者が中村に単独インタビューした時の取材メモを見返すと、「ポスト安倍」の時代を見据えながら、自らの復権にかける思いを次のように熱っぽく語っていた。

「安倍政権はいずれ行き詰まると思いますが、その時どうするのかと言っても、与党にも野党にも青写真を描ける人は誰もいない。ひ弱な政治家が右往左往している時代には、もっと大混乱がやってくるでしょう。私はまだ現在進行形の政治家ですから、そういう時、日本国のために働く場所があれば頑張りたい。そう思っています」

小泉純一郎76歳、中村喜四郎69歳。かつて熾烈な派閥闘争を演じた田中角栄と福田赳夫の愛弟子どうしが長い恩讐を越え、YKKの古いパイプを通じてにわかに見せた呉越同舟の図式は、与野党の枠を超えた大きな「安倍包囲網」を形作るまでに発展するのか、それとも時代遅れの亡霊の如く雲散霧消していくのか──。

角栄のお膝元で行われる新潟県知事選の結果が、「平成政治の総決算」につながると言っても過言ではなさそうだ。

(文中敬称略)

自民党をぶっ壊した男は、いま、何をやろうとしているのか