忙しすぎる勤務医夫婦が、保育園に落ちて下した決断

人生を「最適化」するなら、今しかない
本間 けい プロフィール

保育園に落ちて、僕たち夫婦が決めた事

僕たち家族が都内に転居する予定の2ヵ月前、長男の保育園落選の通知が届いた。当時、妻は3ヵ月の双子も妊娠していた。双子出産までの間に勤務医として仕事する予定だった妻だったが、長男を預けられないのであれば、仕事をするのは難しい。春から赴任する予定だった就職先には丁重にお断りを入れた。

落選理由は、ポイントが足りなかったから、という以外知りようがないのが現実だ。医師だろうが、地方から転居してこようが、双子を妊娠していようが、ポイントが基準に満たなければ落選するシステムである。僕たちのポイントは、一般的なポイントよりも高いはずだ、とネットなどで調べ考えていたが、それでも敢え無く落選。ちょうど妻は、その時から切迫早産の兆候が出たため、断続的に入院することになる。

田舎から仕事の合間を縫って、祖母に来てもらったり、シッターにお願いしたり、僕が休みを取ったりでなんとか対応できたが、今思い返せば、本当に綱渡りの毎日だった。しかし、出産後は、双子の入院などで、より大変になった。

話し合いの結果、今までの生活の延長線上には、僕たちの望むゴールはない、という結論に至ったのだ。現実的な話をすれば、夫婦共に、育児と両立しながら総合病院で深夜休日出勤を厭わない常勤勤務医を続けていくことから、「降りる」という決断をした。

都内への転居をきっかけに、妻はしばらく育児、出産に専念(現在は非常勤医師として勤務)。僕は大学での研究職から、クリニックへの常勤に移った。

医師の中には、大学病院や総合病院から離れることを「都落ち」のような印象を持つ医師が少なからずいる。やはり周囲の医師からは驚かれるし、大学病院に残る様アドバイスを受けることもあった。しかし、医師を辞めるわけではない。医師として、人々に貢献できる別のスタイル、働き方があるのではないか、と考えたのだ。

 

「ゼロベース」で考える

僕たちは、現状を「ゼロベース」で考えた。

医師は、一度医局に入ったり、総合病院に就職したら、そこから抜けるという発想は基本持たない。辞める時の多くは、開業をする時ぐらいだ。

僕たちは、そこから考え直した。

僕たちが職場を積極的に決めてもいいのではないだろうか。そもそも、なぜそのエリアで仕事をしなければならないのか。なぜ、既存のシステム上で仕事をしなければならないのか?そもそも、僕たちは誰のために医療を提供しているのか? どうやれば、医療をより必要としている人たちに届けられるのか? そもそも病気に掛からないようにする方が大切なのでは? どうやれば疲弊した医療者を助けられるのか?

既存の枠組みに嵌らず、「なぜ」を繰り返すことで、生活を、そして人生を根本的に考えることにした。今、僕たちが持っている古い価値観や認識を一度壊して、根本から築き上げれば、より本質的な解決策が見つかるのではないか、と考えたのだ。

これは謂わば、自分軸の人生を選んだ、ということだ。他人から規定される人生ではなく、自分の意思で取捨選択をする働き方、生き方である。だからと言って、現在、僕たちが抱えている医療問題が解決する訳ではない。しかし、自分軸の人生を選んだ事で、僕と妻の考え方はより自由になった。

人生の「最適化」とは

「労働時間を短くしろ!」「自治体のせいで保育園に入れなかった!」と誰かのせいにするのは、世の中の仕組みを甘んじて受け入れ、解決を他者に委ねているに過ぎない。こうなると他者依存の状態になり、常に怒りを抱える事になる。

誰かに用意された枠組みやルールに期待や落胆をするのではなく、自分軸で働き方、生き方を選ぶ事こそ、より本質的だと考えたのだ。

とにかく、ゼロベースで考えること、そして、舵取りできる人生を選ぶ、人生を楽しむ。これこそが、僕たち夫婦が導き出した答えである。

今の僕と妻は、大学病院にいる頃に比べて、ずっと時間ができた。子供と触れ合う時間も増え、なぜか論文を読む頻度が増えた。これは不思議なことだが、忙しくしていた頃には敬遠していた、論文や、医学書を自分から進んで読む機会がずっと増えたのだ。それだけでは無い。クリエイティブな発想、患者・スタッフとの接し方、医学知識、全てがより高まった。

自分の人生を整えやりたい事をする生き方、つまり人生を「最適化」する事こそが、自分軸の生き方である。そして、今の働き方に疑問を感じた時こそ、人生を最適化するタイミングなのだ。

「自分の人生のかじ取りを自分でできていない」と思った自身の体験をふまえ、「人生にとっての無駄を省くとはどういうことか」のノウハウを明確にまとめた一冊。「まずは自分のリソース(資産)を考えるべき」、「リソースとは単なる資産だけではなく、自分のスキルや人間関係、時間の概念でもある」、「最適化とは、『何をしないか』ではなく、『何をするか』に基づく考え方である」等々、具体的な考え方のヒントをくれる。