忙しすぎる勤務医夫婦が、保育園に落ちて下した決断

人生を「最適化」するなら、今しかない
本間 けい プロフィール

医師の仕事を「最適化」しよう

医師不足、医師偏在。非常に由々しき問題である。しかし、その問題は一朝一夕で解決できるだろうか? 現場の医師は、疲弊している。一刻も早く、現状の体制の変革を期待しているのだ。

日本の医療を守るために必要なのは、即効性のあるシステムの整備だ。具体的に言うと、最短で、医師の仕事を「最適化」することである。「医師」というリソース(資産)を最大限活用するために、どのようにすれば医師のために充実した環境を提供できるのか。周囲の人たちがそこを本気で考えてあげなければならない。医師を守る事こそが、患者を守る事に繋がるのだ。

例えば、クレーム処理や予約取り、同意書取りなど、医師がしなくても良い作業を別の人間が行う、と言う考え方は、即効性があるはずだ。タスク・シフティングとも言うが、種々の作業・雑務を医師のアシスタントに行ってもらう、という試みはどんどん適応を拡大していくべきだろう。

医師不足とか言われながらも、その貴重な医師が、誰でもできる「次回の予約取り」で、一人の患者にかかりっきりになっている姿は、滑稽以外のなにものでもない。こんなものはいくらでも権限委譲(エンパワーメント)を行い、空いた時間を、論文読むなり、外来時間を長くするなり、手術の手技を高める時間に使うべきなのだ。

 

70年前から変わらない「応召義務」とは

医師法第19条第1項に、こういう記載がある。「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」、いわゆる医師の応召義務である。

医師の応召義務については1948年の制定から一度も変更されておらず、これが医師の過重労働の一つの原因にもなっているのは明白だ。明らかに時代は変わってきており、患者側の不当な要求が増えてきている昨今、この応召義務については、「正当な事由」の明確化など、何らかの変革が必要になってきている。

応召義務の闇は深い。どんなに医師が疲れていても、治療すべき患者がいるのなら治療すべきである、と法律で規定されているのだ。

僕が出会った患者の中には、日中に仕事があるからと言う理由で、敢えて夜中の救急に頻回に来る患者がいた。僕の担当患者で、やや専門的な疾患だったので、オンコール(当直)の先生にお任せする事ができなかったのだ。

その患者が来たら深夜に関わらず、僕の携帯に電話がかかってきた。ある日注意をしたら、「医者だろ? 時間に関わらず診ろよ」と言われたのだ。このように権利意識が肥大化した人たちは着実に増えてきており、医師を守る法律が無いという現状は、確実に改善されるべき問題である。

医師も人間、患者も人間。お互いのことを思いやる態度は必要不可欠だ Photo by iStock

ここに紹介した、医師多忙の理由は、まだまだごく僅かである。しかし、どの問題も例外なく、医師が最終的に「ツケ」を払い続けているのが現状だ。

これまでの問題を眺めてみると、大きな流れとして、「既存のシステム」「旧態然の考え」に医師が翻弄されている、というのが分かるはずだ。

それであれば、皆が声を上げて新しいシステムを作り上げればいいではないか、と考える人もいるかもしれないが、そうもいかない。何故なら、当事者の医師たちは、そういった改革・変革を許されないほどキャパシティぎりぎりの生活を強いられているためである。時間的、肉体的、精神的問題を、医師は抱えざるを得なく、何かを変える余裕なんてないのだ。