Photo by iStock

忙しすぎる勤務医夫婦が、保育園に落ちて下した決断

人生を「最適化」するなら、今しかない

子どもを授かったが会う時間すらなく、疲弊していた勤務医だった本間けいさんは、医療専門書ではない『人生最適化思考』という著書を刊行した。医師が人生の最適化(デフラグ)を説く? ――そこに至るには、自分の人生をまったくカジ取りできなかったことから脱却を図った思い切った行動があった。

 

30代・働き盛りの勤務医の苦悩

僕と妻は医師である。子供は3人。まだ幼い。

妻の妊娠前は微塵も考えたことはなかったが、子育てを通して、夫婦2人が共に医師として働き続ける事がいかに難しいのか、様々な点から気付かされた。ああ、僕たちはとても非力で矮小な存在だ、とつくづく自覚した。

なぜ、そういう風に感じるのか、まずは、医師の多忙な生活を説明していかなければならないだろう。

僕も妻も、大学病院で臨床をしながら、大学院生として研究も行っていた。大学院に入ると、「ベッドフリー」と言い、外来や手術、入院患者の診察といった臨床業務を免除されるのが一般的であり、日中から研究のみに勤しむことができる。

しかし、僕と妻の場合は「社会人大学院生」という形だったため、臨床業務は免除されず、業務終了後や休日に研究を行うしかなかった。

僕の場合は、朝は入院患者の診察を外来前に行わなければならないので、午前7時前後に病棟での業務を開始。日中は外来や手術、雑務、外病院での外来。夕方17時頃になったら、再度病棟に戻り入院患者の診察、その流れで、毎日ある臨時手術に2件ほど入る。臨時手術は無い時もあるし、1件の時もあるが、概して終了時刻は午後10時頃。その時間から大学院生としての研究を進めることになる。

膨大なデータをまとめる作業があったので、毎日数時間はしなければならず、終了は午前1~2時になる。大学病院の場合、入院患者がゼロになることはあり得ないので、そうなると休日も入院患者の診察のために朝、夕2回は病棟に行かなければならなかった。その他に、定期的なオンコール当番、つまり当直業務が回ってくる。

こんな生活が大学院時代はずっと続いた。

人気ドラマ『コウノドリ』はリアルな医療現場と言われていたが、医師たちは全然寝ていなかった……。こちらはヤマハミュージックメディアによる公式ムック

「大学病院」「大学院生」「臨時手術」などといったファクターがあるとより多忙な状況に陥りやすくなるが、もちろん病院毎にカラーは異なるので、忙しさの種類も異なる。一般的には、病床数が大きい病院であればあるほど、重症な患者は集まりやすく、業務も多くなる。

2016年度の厚生労働省委託事業である「医療勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の取組みに対する支援の充実を図るための調査・研究事業報告書」では、病院における許可病床数が大きければ大きいほど、そして年齢が若ければ若いほど、残業時間が長くなる傾向があるというデータが示されている。

医師が看護師のヘルプに回る

医師がなぜ多忙なのか、現状を知らない方も多いのではないだろうか。

医師の多忙の本質は、大きく分けて、2点。

①医師が労働者として捉えられていない現実

②「大いなる無駄」「過重労働」が、現在の医療システムに当然の如く組み込まれている、

という問題だ。日本の医療の現状を表す一文がある。それは「日本の医療は、医師の性善説によって支えられている」という言葉だ。「その通り!」と医師である僕自身も思う。それだけ、日本の医療は、医師の「自己犠牲の」善意によって支えられている

そんな言葉は医師の驕りだ、と感じる人は、一度リアルな医療現場を見て欲しい。

クレーム処理、予約取り、同意書取り、不必要な会議への出席、ルーティン検査への事前説明、点滴・採血、紹介状の記入、その他多種多様な問題を、患者の診察、研究、手術の合間にこなすためにご飯も食べずに奔走する医師たちの姿を見ることができるはずだ。僕は、忙しい診療の合間に、警察から証言を求められて裁判に出たことさえある。