借金4億、派手な女遊び…そこから学んだ「諦めた先から始まる人生」

ジェーン・スー、父について大いに語る

コラムニストのジェーン・スーさんが、父親との暮らしを振り返り『生きるとか死ぬとか父親とか』に著しました。

一時は借金4億円。女性関係も派手な父親だったけど、母親を心底愛していた。拍子抜けするほど明るくて自由人。

そんな無視しようにもできない、憎み切れない「お父さん」に対する「娘」の思いを語っていただきました。

「今のうちに聞いておかなくちゃ」

―著書の『生きるとか死ぬとか父親とか』は今年80歳になるお父さんとの家族模様、そして昭和から平成へと移ろう時代の世相をゆったりとした筆致で描いた、笑いあり涙ありのエッセイ集です。

今年45歳になるジェーンさんが、このタイミングでお父さんのことを書こうと思ったのはなぜでしょうか。

私が母を亡くしたのは24歳の時でした。父と二人きりの家族になってから、もう20年以上経ちます。振り返ると、私は母の「母親としての顔」しか見せてもらっていませんでした。

学生時代のことや、父との恋の話など、もっといろんなことを聞かせてもらう機会があればよかったのに、とさびしく思っていたのです。

それで、このところめっきり老いてきた父の姿を見ていたら、「父についてもまだまだ知らないことがたくさんある。今のうちに聞いておかなくちゃ」と考えるようになりました。

 

―若いころは病弱だったジェーンさんのお父さんは、大きな手術を乗り越えて6歳年上のお母さんと結婚。事業を成功させて財を成すも、のちのち投資で失敗し、事業を清算します。

まさに波乱万丈の人生ですが、この本で描かれるひょうひょうとした様子には、悲愴感はありません。

一貫してあっけらかんとポジティブに生きてきた父ですが、一時は4億円もの借金がありました。いろいろな会社の株を買い漁っていたけれど、株で儲かっているのを一度も見たことがありません。それに、おカネだけじゃなくて、母以外の女性との問題もありまして……。

病気も借金も、女性のことも、あの時代の男性にはありがちなことだったのかもしれませんが、母も私も、心中はけっして穏やかではなかった。いまになってようやく淡々と振り返れるようになりました。

この本には、父が私に経済援助を頼んでくる話も洗いざらい書いています。そんな時でも、父は拍子抜けするくらいに明るくて、自由な人です。

そもそもこの本の元になる連載を始めるときだって、父から連絡があって会ってみたら、開口一番「引っ越したいんだけど、おカネがない」と。「じゃ、おカネを出すから、お父さんのことを書かせて」ということで、交渉が成立したんです(笑)。

―そんなお父さんとの20年。娘としてはどう過ごしてきたのですか。

私のほうは私のほうで、20代は自分の人生を生きるのに忙しかった。母の死後、父に対して「もうちょっと父親らしくしてほしい」と期待したこともありましたが、空振りでしたし、あきらめました。

お互いに血気盛んなころは、大げんかもしました。私が40代になってからでしょうか、父も老いてきて穏やかに接することが増えました。ようやく平和な時期を迎えられるようになったのが、いまなんです。