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財務事務次官セクハラ事件が映す「平成の末期症状」

完全にズレている彼らの感覚が示すもの

改元まで残り1年を切るなか、財務事務次官セクハラ騒動に続き、ジャニーズタレント泥酔事件が世間を騒がせた。不況から抜け出せず、不祥事も続いたこの時代。その末期症状を象徴するような事件から何を読み取れるのか。

このたび、平成を総括した対談本『平成史』を上梓した作家・佐藤優氏と思想史研究者・片山杜秀氏による特別対談。

「僕ちゃん、ちゃみちい」

佐藤 平成の最後になって、とんでもない事件が起きましたね。財務省のトップの福田淳一が、テレビ局の女性記者に「おっぱい触っていい?」「手、縛っていい?」と迫り、セクハラで(事実上の)更迭になりました。

片山 確かに誰も想定できない、いままでとは次元が違う事件でしたね。

佐藤 しかも福田は「女性が接客をする店に行き、お店の女性と言葉遊びを楽しむことはある」と釈明しましたが、セクハラは認めなかった。

片山 どんな言葉遊びかと思いましたが(苦笑)。財務省が自ら調査委員会を設置して、真相を明らかにしようとしたことにも驚かされました。

佐藤 自分の部下に調査させるわけですからね。しかも財務省が金を払っている弁護士に依頼し、セクハラの被害女性に名乗り出るように呼びかけた。これって「文句あるなら、一歩前に出ろ!」という戦前の陸軍みたいな話でしょう。財務省には、帝国陸軍の伝統が残っていたのかもしれない。

片山 (苦笑)。そうとしか考えられませんね。本当に末期的な感じがしました。その上、同時期に新潟県の米山(隆一)知事もネットで知り合った女子大生を買春した疑惑が報じられて、その後、辞めてしまった。

佐藤 福田、もしくは財務省幹部は、米山知事が買春で報じられるタイミングを知っていたはずです。知事の買春と財務次官のセクハラなら、知事の買春にワイドショーは時間を割くだろうと読んで、情報を出した。

片山 でも読み通りにはならなかった、と。

佐藤 結局、記者は福田に殺到して、一面トップの大ニュースになりました。米山の買春は主に三面記事でしたからね。福田は、なんて理不尽な世の中なんだと思ったはずですよ。確かに「おっぱい触っていい?」「手、縛っていい?」「浮気しようよ」とは口にしたが、実際には触っていないし、縛ってもいない。この女性記者とは浮気もしていない。それなのに、なんで自分がこんな目に遭うのか。世の中が間違っている。だから裁判で徹底的に争って、白黒をはっきり付けてやる。俺が勝つに決まっていると信じている。

片山 そんな人物が「官僚中の官僚」と言われる財務官僚のトップにいるのか……。ほぼ我々と同世代の平成を生きている人間の終着点がこれだったのか、ということですよ。

佐藤 彼は、湘南高校出身なんです。私の出身の浦和高校と姉妹校で定期戦をやっていたから、湘南の人間は多少知っていて、彼のことを知っているか聞いてみたんです。そしたら皆が「生徒会長だったが印象にない」と口を揃える。財務省に入った当時も印象がないらしく、課長になってから途端に、態度が変わったようなんです。彼のことを直接知っている人によれば、「豪放磊落を装う小心者」だと。

片山 なるほど、官僚にはそうした方が多いのですか?

佐藤 多いかもしれない。外務省にもいますよ。現在、とある国の総領事をやっている人間です。もともとは東大出身のエリート。鈴木宗男さんと一緒に赤坂の芸者さんのお店で、ロシア人の接待をしていて、すべて終わったあとにもう一回飲み直しましょう、となった。

その男は、そこで、芸者さんのおっぱいをさわろうとしたんです。着物の中に手を入れようとしたのね。芸者さんは、ぎゃって逃げたんだけど、そしたらその男は寝そべって足をばたばたさせて、赤ちゃんポーズをし始めたんです。おしめをかえてっていうスタイルです。そこで、「僕ちゃん、ちゃみちいんでちゅ(寂しいんです)」って幼児言葉を言い始めた。

片山 なんなのですか、それは一体!?

佐藤 これは意味があることなんですよ。要するに、とっても恥ずかしい恰好をして犬がお腹を出すのと一緒で、東大出身の秀才中の秀才である自分も、鈴木先生の前では恥ずかしい姿を見せます、というプレイなんです。「先生とは運命共同体です」という、官僚なりの懐に入る技なのです(苦笑)。