日本人研究者が発見!食糧難を救う「最強作物」の作り方

過酷な環境でも育つイネやダイズが実用間近
武田 真梨子 プロフィール

環境ストレスに強い新たな作物の開発  

シロイヌナズナの耐性を高めることに成功した篠崎教授は、細胞内にDREBがたくさん生産されるように遺伝子組換えしたシロイヌナズナのDNAをイネに導入し、ストレス下において実験を試みた。すると、開発したイネは従来のイネよりも乾燥に対して強い耐性を示した。

この結果について篠崎教授は、植物が進化の過程で海から陸に上がり、乾燥や高温といった新たなストレスを受けたときに、DREDREBのしくみを獲得したのではないかと考察している。陸上植物が共通してこのしくみをつかっているのであれば、遺伝子組換えによって様々な植物の耐性を高めることも期待される。

イネの比較
9日間水を与えずに育成させた後、水を与えて13日間育成させた従来のイネと開発されたイネ (提供:篠崎和子教授)

このDREとDREBの研究を論文にして発表したところ、世界中の研究機関から協同研究のオファーがあった。篠崎教授は現在、メキシコ、コロンビア、インド、フィリピン、ブラジルなどの研究機関と協同で、イネ、コムギ、ピーナッツ、トウモロコシなどの主要作物について環境ストレスに強い新たな作物の開発を行っている。

フィリピンやブラジルでは、屋内の実験室だけでなく、実際の栽培環境に近い野外での栽培実験も行われている。フィリピンに拠点をおく国際イネ研究所(IRRI)との協同研究では、野外の環境下で有用な耐性遺伝子の選定が重ねられ、ブラジルの農牧研究公社(EMBRAPA)との協同研究では、ダイズの野外試験が進められている。従来のダイズに比べ開発されたダイズでは30%増の収量があったことも、これまでの結果として報告されている。

イネの屋外試験
イネの野外試験
ダイズの屋外試験
ダイズの野外試験

篠崎教授は、耐性のしくみをきっかけに、植物の生命活動を支えるストレス応答機構のなぞをさらに解き明かしていくために研究を続けていくという。近い将来、早く成長する植物や年に何回も収穫できる作物ができるかもしれない。そうなれば人々は食べものをより安定して得ることができるようになる。人々が食べ物で困ることのない未来のために、篠崎教授の研究に期待したい。

篠崎教授「みどりの学術賞」記念講演会開催!

篠崎和子教授は、今年度の「みどりの学術賞」の受賞者のひとりである。みどりの学術賞とは、植物、森林、自然環境などについて国民の造詣を深めることを目的に内閣府が設立した学術賞で、国内において植物、森林、緑地、造園、自然保護などに係る研究、技術の開発その他"みどり"に関する学術上の顕著な功績のあった個人に内閣総理大臣から授与される。

東京・お台場の日本科学未来館では、6月2日(土)に「みどりの学術賞」受賞記念講演会の開催を予定している。篠崎教授とともに今年度受賞された熊谷洋一氏(東京大学名誉教授)がそれぞれの研究内容とその成果について講演する。ぜひこの機会に足を運んでみてはいかがだろう。(※本講演会は終了しました)

熊谷氏 篠崎氏
熊谷洋一氏(左)、篠崎和子氏(右)

 「みどりの学術賞」 受賞記念講演会 

開催日時:2018年6月2日(土)13:30(13:00開場)〜16:00

開催場所日本科学未来館 7階 未来館ホール

講師

熊谷洋一氏(「自然環境の保全管理の基本となる景観影響評価方法論の構築と自然環境についての国民への理解と普及への貢献」に関する功績)
講演タイトル『自然環境の保全と景観シミュレーション』

篠崎和子氏(「植物の環境ストレス応答機構の解明と耐性作物の開発」に関する功績)
講演タイトル『乾燥や高温などの環境ストレスを生き抜く植物の仕組み』

参加費:無料(要申込み

講演会の詳細、お申し込みは、日本科学未来館の「みどりの学術賞 受賞記念講演会」のページ http://www.miraikan.jst.go.jp/event/1804111122744.html へ

取材協力:東京大学大学院 篠崎和子教授