日本人研究者が発見!食糧難を救う「最強作物」の作り方

過酷な環境でも育つイネやダイズが実用間近
武田 真梨子 プロフィール

篠崎教授はおよそ10年間、植物がストレスを感じた際に起こる遺伝子と形質の関係を研究し、ようやくストレスに対する耐性を現す際に必要な“きっかけ”の存在を明らかにした。篠崎教授が発見した“きっかけ”とは、植物の細胞のなかにある小さな“タンパク質”と“塩基の配列”で、まるで鍵と鍵穴のような関係によってストレスに対する反応を制御していた。

【図】鍵と鍵穴の関
遺伝子がコードしている耐性を現す際に必要な“鍵”と“鍵穴”の関係

鍵穴に鍵がはまったとき、遺伝子がコードされている耐性が形質として現れてくる。逆に鍵穴にはまっていないとき、耐性は現れない。教授はこの関係を明らかにした後、鍵が鍵穴を認識するしくみについてさらに調べた。鍵は特定の場所にしか結合しないため、鍵穴には鍵が認識するための目印があると考えたのだ。

 

そこで、鍵穴である塩基の配列に注目し、鍵が認識している領域を探すために塩基の配列を両側から狭めながら、耐性が現れるかを調べていった。研究を続けること3年、教授はついに鍵に認識されるために必要な9個の塩基の配列「TACCGACAT」を特定した。そして、この鍵穴にある塩基の配列を「DRE」と名付けた。

DREの特定
鍵に認識されるために必要な9個の塩基の配列「TACCGACAT」を特定

DREを特定した後、篠崎教授はDREを認識するタンパク質の存在も探し、約5年をかけてついに「DREB」の存在をつきとめた。このDREBは植物が環境ストレスを受けた際に、耐性獲得に関与する40種類以上の遺伝子群を制御していると考えられ、ストレス時における耐性の獲得を複合的に制御する、いわばマスターキーのようなふるまいをすることが明らかになった。

篠崎教授は細胞内にDREBがたくさん生産されるように遺伝子組換えしたシロイヌナズナをつくり、ストレスに対して耐性が高まるかどうかを実験した。その結果、開発されたシロイヌナズナは乾燥や低温といった過酷な環境のなかで、従来のシロイヌナズナよりも高い耐性を示した。

低温や乾燥に強いシロイヌナズナ
低温や乾燥に強いシロイヌナズナの開発に成功 (提供:篠崎和子教授)