怖くて聞けない「事故物件」にまつわる都市伝説

これは誰にでも起こり得る物語だ

おおきく分けて3パターン

先日、都内にある仕事場のひとつを改装しました。

依頼先は建物を建築したメーカーのリフォーム部門で、担当者から職人まで、みな数年ごとにお世話になっている方々ばかりです。

そのとき、ふと気づかされたのです。仕事場だけに家族もほとんど寄り付かない建物の内情に、最も詳しいのはオーナーである自分ではなく、この改装業者さんたちではないかと。

戸建てやマンションずまいの一般家庭にしても、親子や兄弟姉妹間の関係は希薄となりつつあります。自治会への加入が任意との判例があるため、隣人とすら言葉を交わさないケースも増えています。

そんな現代社会において、間取りから家族の暮らしぶりまで客観的に把握しうるのは、そこに出入りする業者ではないでしょうか。

高齢化とともに深刻な社会問題となっている孤立死も、そこに至るまでの過程を証言できたのは、離れて住む身内ではなく、庭の手入れを頼まれた植木屋や、食事を運んでいたデイサービスの従業員だったという話も、ときおり耳にします。

今回、拙書『瑕疵借り』を発想したのは、まさにそんな世のなかの一側面を象徴的に描写し、これまで不可視となってきた問題を浮き彫りにしうるのでは、そう考えたからです。

都会を中心に賃貸のひとり暮らしが増加する昨今、病死や自殺などで賃借人が死亡すると、その部屋は瑕疵物件となってしまいます。

「大島てる」氏の瑕疵物件検索サイトが多く閲覧されている事実からも、世間の関心の高さがうかがえます。

むろん単純な好奇心もあるでしょうが、新たな物件を探している人々にとっては、瑕疵物件を避けるための情報入手の場にほかなりません。

瑕疵物件には告知義務といって、次の入居希望者に対し、前の住人の身になにが起きたかを説明する必要が生じます。これを怠ると違法となり、売買物件においては損害賠償が認められたことさえあります。

 

賃貸物件はそこまで厳しくはないようですが、やはり告知義務違反はご法度であり、賃貸契約に大きな亀裂を生む事態になりかねません。

そうした瑕疵はいくつかに大別されます。建物自体に問題がある物理的瑕疵や、同じく建物に法令違反がみとめられる法的瑕疵は、わりと基準がはっきりしているため隠蔽されにくいといえます。

環境的瑕疵は、周辺に悪臭や騒音を放つ場所があったり、治安が悪かったり、物件以外に難点が潜んでいるケースですが、これも地域を観察すれば実状が立証できます。問題は残るひとつ、心理的瑕疵です。