「世界2大迷惑」金正恩とトランプに振り回される習近平の悲哀

苦労しているのは日本だけではない
津上 俊哉 プロフィール

これでも習近平の悩み事の「半分だけ」

このように、国際情勢のめまぐるしい変化を前にして、安倍総理だけでなく習近平も気の休まらない毎日だろう。しかも、以上は中国が抱える外交懸案の半分でしかない。懸案の残り半分は中米通商貿易関係だ。

習近平は去年も今年も「いま米国とは争いたくない」一心で外交を運営してきた。難題は内外に山積しているのに、米国と事を構えたら、2期目の政権運営は非常に難しいものになるからだ。そのために準備もしてきたが、事態は楽観を許さない。

 

5月20日、訪米している中国側代表団と米国側の交渉終了後、1日遅れで「共同声明」が発表されたが、発表の経緯も含めて訝しいことだらけだ。

「双方は同意した」という文言が見える一方、それで交渉が終結した印象はない。
中国側代表団を率いた劉鶴副総理は「貿易戦争はやらない、関税賦課合戦はしないことで双方が共通の認識に達したことが今回の最大の成果だ」と述べた。

だが、米側では代表のムニューシン財務長官が「関税賦課は保留する(put on hold)」と言うのみ、さらにライトハイザー通商代表は「中国の市場開放で対中輸出を増やすことは大切だが、強制的な技術移転、ハッキング、イノベーションの成果を侵害から守ることの方がはるかに大切だ」として、今後の関税賦課の可能性を否定していない。

いま米欧エリート層には中国脅威論・異質論が急速に拡がっている。ライトハイザー通商代表の強硬論はこの新しく生まれたコンセンサスをバックにしている。米中の経済的な軋轢は今後も続く。貿易戦争に発展するリスクも小さくない。最低「米中ハイテク冷戦」の火ぶたは既に切って落とされたのかもしれない。