26歳で初めて医師から告知…知られざる「アルビノ当事者」の願い

この情報不足をどうにかしたい
崎山 敏也 プロフィール

一日中、真っ暗な部屋で過ごす親子

その当時からずっと、石井さんは化学工場で働いています。初めて白い髪で出勤した日、同僚や上司はあたたかく迎えてくれました。弱視のためできない仕事もありますが、声や足音、気配で相手が誰かわかる石井さんは、会社内のコミュニケーションに不自由はしません。

それまでも積極的に旅行に出かけるようにしていたので、外出しても困ることはあまりないそうです。帽子に遮光眼鏡をかけ、長袖の服を着ていますが、歩き方を見ても、石井さんが弱視とはわかりません。

「自分がアルビノであることがわかった時、本当の自分に出会ったんです」

と石井さんは語ります。しかし「もしかすると、他のアルビノ当事者や家族も、自分のように適切な情報を知らずに暮らしているのではないか」と思い立ち、化学工場で働きながら、自分のホームページを作りました。

また、千葉県に住む当事者の交流会も立ち上げました。他県や遠方の交流会ともネットワークが生まれ、個人的に依頼があれば、どこでも相談を受けに出向きました。

 

アルビノ当事者に会ってみると、やはり多くの人が、入園・入学、入試、就職、結婚といった人生の節目節目で、同じような問題を抱えていました。

現在では、Facebookも活用しています。石井さんが使うパソコンには、周囲の光を遮断する黒いプラスチックの枠が自作で取り付けられています。電子メールの画面は、青い背景に白い文字が浮かぶように設定しました。いろいろ試して、石井さんが一番見やすかったのが、この組み合わせだったそうです。

石井さん自身、アルビノと診断されるまで、同じアルビノの仲間に出会うこともなく孤立していましたが、交流会や相談で出会った当事者・家族の置かれている状況を知り、「やはり、正しい情報が伝わっていないことが多い」と感じるようになりました。

例えば、医師から「この子は日に当たると皮膚がんになり、早く死んでしまう」と言われ、一日中真っ暗な部屋で過ごしている親子の姿を目にしたことがあります。

実際には、アルビノ当事者は平均的な日本人よりは皮膚がんになる率が若干高いですが、いわゆる白人と同じぐらいの確率です。長袖の服や帽子、日焼け止めを使えば屋外にも普通に出かけられるのに、そうした情報が伝わっていないのです。

アルビノの子供をもつ親が、紫外線をカットしようと一生懸命になるあまり、子供が通う小学校にかけあって、教室の全ての窓に紫外線をさえぎるフィルムを貼ったという話も聞いたそうです。

「でもそうなると、その子は学校に在籍している間、ずっとその教室から動けなくなりますよね。本当は、そこまでしなくてもいいんです」と石井さんは話します。

「まぶしければ、窓から離れて、廊下側に移動すればいいんです。そういうちょっとした配慮で、普通の人と変わらずに暮らせます」

また、アルビノの子供の入学前に、学校側から生徒や保護者に対する説明会が行われ「今度こういう子が入るから、絶対に悪口は言わないでください」と説明されることがあります。すると、周りの子供は冗談すら言えない状況になり、アルビノの子を遠ざけ、結果として本人の孤立を招いてしまうことがあるそうです。

「周りから見て、当事者として『特別な存在』であり続けないと生きることができなくなる状況ですよね。でも、そんな特別扱いは必要ないんです」

こうした経験から、石井さんの初めての編著書『アルビノの話をしよう』は生まれました。

表紙をめくると、子供から大人まで様々なアルビノ当事者の写真が掲載されています。髪の色だけでも白、金色、茶色と、人それぞれであることがわかります。

石井さんのみならず、女性の当事者、国立の研究所で研究職として働く男性の当事者、アルビノの子供を育てている母親の体験談、そして学校や就職、普段の生活に役立つ情報…本書には、アルビノ当事者のための智恵が詰まっています。

髪の色と同じく、肌の弱さも、また弱視といっても、見えにくさは人それぞれです。医師の立場からの解説に加え、学校や社会生活での弱視の支援や紫外線対策など、自分に合ったものが見つかるようわかりやすく書いてあります。それに加えて、様々な相談窓口・当事者団体の連絡先、視力補助具の紹介といった実用的な情報も掲載しています。

本書はアルビノ当事者を想定読者として作られてはいますが、石井さんは、当事者や家族ではない一般の人にも手にとってほしいと考えています。