# 仮想通貨

蔓延する「ブロックチェーンは善」という空気を鵜呑みにできない理由

「改変不能な記録」を記述するのは誰?
エミリー・パーカー, LONGHASH プロフィール

ブロックチェーンは善人だけに利益をもたらすのか?

『The Truth Machine』は、ブロックチェーンの未来について肯定的なビジョンを見せてくれる。両著者が、この技術を心から認めていることには疑いの余地はない。しかし同著が他書と一線を画しているのは、著者らがブロックチェーンで賞賛される「不変性」について、その影の部分にも迫っていることだ。

 

現状では、ブロックチェーンには行き過ぎた誇張がなされ、善意ある人たちだけがこのテクノロジーの恩恵を得るという印象を与えている面がある。だが実際には、そうではない。

どうすれば、力のある悪質な何者かが、中傷や悪態を不変化するためにブロックチェーンを利用することを防げるだろうか? ブロックチェーンは「真実」を伝える手段だと広く説明されているなかにあっても、フェイクニュースへの対抗手段になり得ないのはなぜなのか?

ブロックチェーンが諸刃の剣であることは、登記の問題からも見ることができる、と同著は指摘する。「登記をいちから作らなければならない貧しい国々では、住民の所有権を認証する役割にある政府高官が腐敗していて、最初から嘘の情報をブロックチェーンの登記システムに書き込む恐れがある」。また、「ガーベッジ・イン/ガーベッジ・アウト」(誤ったデータを入力すれば、誤った答えしか出てこない)という問題もある。ブロックチェーンに、信頼性の低い元データを入力すれば、問題はさらに深刻化するのだ。

「多くの途上国では、何世紀にもわたって滅茶苦茶な記録が蓄積されてきた。そうした情報を永久的な不変性のあるブロックチェーンの記録に急いで入力するとなると、他に被害が及ぶような権力者の主張や汚職を正当化し、正式なものにしてしまうという懸念がある」と、同著は指摘する。賄賂のような犯罪行為があったかどうかを、ブロックチェーンでは知ることができない。ブロックチェーンができるのは、「揉めごとになったとき、汚職役人に対抗する証拠として使い得る、反論の余地がないアクティビティのパターンを明らかにすること」だ。

過大な「礼賛」がはらむ不気味さ

さらに大局的な疑問もある。永続的な記録を作る決定は、どのようになされるべきか? また、ブルートフォース攻撃が勝ってしまった場合には? 「スラム地区では、家の所有権は麻薬ギャングによって決められている場合が多い」と、ケーシー氏と共著者のヴィーニャ氏は書く。「ギャングが決定権を持つ世界を、ブロックチェーンによって認証したいだろうか?」

こうした問題に対して、簡単な答えはない。だが問題提起をした著者の二人は賞賛に値する。ブロックチェーンが誇大に喧伝される昨今の雰囲気は、「ツイッターやフェイスブックこそが政府の検閲に対抗し、独裁者を失脚させる手段になりえる」と私たちが賞賛したソーシャルメディアの黎明期に似て、不気味さをはらんでいる。ソーシャルメディアは、たしかにそうした役割を果たしたが、一方で、独裁的な政府にとっての強力なツールにもなっている。

ブロックチェーンが同じ道を辿るかを判断するのは、時期尚早だ。たしかに、活動家たちはブロックチェーンを使って彼らの物語を永久に残すことができる。だが圧政的な政府が同じ目的でブロックチェーンを使う可能性はある。

『The Truth Machine』は、ブロックチェーンの世界について真に迫った議論を展開している。ただ、ブロックチェーンが未来のテクノロジーなら、それを現在を生きる私たちと同じ考え方の人たちだけが使うものだと仮定すべきではないだろう。ブロックチェーンは書き換えることのできない歴史の記録を記述することができるかもしれないが、誰がそれを書くことになるのかまでは決められないのだ。(訳・山田敏弘)