東京の湾岸タワマンが「天空の老人ホーム」と化す日

これが「人生100年時代」のリアル
河合 雅司 プロフィール

少子化で子供が生活習慣病に

少子高齢化は住まいだけでなく、自分の家族にも多大な影響を及ぼします。たとえば、少子化が子供たちを不健康にする事態だって起こり始めています。

年間の出生届がゼロ、つまり子供が生まれてこないという自治体はすでに登場していますが、今後もそういう自治体が増えていくと思われます。それが加速することによって、自分の住んでいる地域に小学校や中学校がある、という常識が崩れてしまうこともあるでしょう。

自宅から歩いていける距離に学校がなくなった子供たちは、遥か遠い場所にある学校に通わなければなりません。東京でも電車を乗り継いで通学する子供たちがいますが、全国どこでも東京と同じように電車やバスといった公共交通機関が充実しているわけではありません。

大人たちが子供を送迎しなければいけない地域もあります。一昔前なら徒歩通学も運動の一環でしたが、それが送迎に取って代わられることで、子供たちは体育の時間ぐらいしか身体を動かす機会はなくなります。

近所に子供が少ないとなれば、子供同士で遊ぶ機会も減ります。帰宅後に多くの友人たちが一緒に遊んで身体を動かす機会もなくなっていくわけです。

結果として、子供の身体の成長にも影響を与え、その子供たちが大人になった際の社会の活気にも悪影響が及ぶと考えられます。それだけでなく、糖尿病や心臓疾患といった大人の病気が、子供たちの間ですでに広がり始めています。

少子化は、私たちが予想だにしていなかった事態を引き起こしていくのです。

 

運行本数が減り、会議に間に合わない

少子高齢化は、あなたの仕事にも確実に影響を及ぼします。

たとえば都市部の郊外などでは電車やバスの運行本数が減るというリスクがあります。始発時間が遅くなったり、早朝の乗り継ぎが悪くなったりして、大事な会議や打ち合わせ、商談に間に合わなくなるということだってあるのです。

今年3月には、JR三江線(全長108.1㎞)も廃止に
(『未来の年表2』P133より)
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JR北海道や四国、九州の3社が、利用者の減少により運行本数を減らすなど、すでに鉄道事業の縮小や見直しが始まっています。こうした事態は地方だけでなく、今後は東京や大阪、名古屋といった大都市でも生じます。

大都市は、人口こそ急激には減りませんが、そこに住んでいる人たちの年齢構成がガラリと変わっていきます。鉄道会社やバス会社は、そういう人の動きを調べて運行本数やダイヤを調整しているわけです。

なので、勤労世代がさらに減っていく今後は、都心のオフィス街を行き来する電車でも始発時間が遅くなることが考えられます。むしろ高齢者のニーズに合わせて、日中の通院や買い物に行く時間帯のほうが、運行本数が増えていくのではないでしょうか。

他方、福岡のバス会社は、運転手を確保できないがために運行本数を減らしました。ニーズもさることながら、運送サービスそのものの提供も危うくなる事態が、大都市においても問題になるのです。

二十四時間、どこにでも交通網があることを前提にした発想は、変えていかなければなりません。

ネット通販は盛んになり、商品が届かない

少子化によってドライバー不足が懸念されているのに、利便性を求める若者を中心にインターネットを利用した通信販売の普及が著しく、それが不足に拍車をかけています。

一方で、今後は80代以上の独り暮らしの高齢者が増え、買い物に出かけるのが困難という人が増えます。すなわち、自宅の玄関先まで物を運んでほしいというニーズはさらに大きくなっていくということです。

このまま便利な社会を追求していくならば、早晩、物流が麻痺することは明らかです。それは、独り暮らしの高齢者の生活が成り立たなくなることのみならず、社会全体が機能しなくなるということを意味します。

こうした問題に対して、政府はAIを搭載したドローンや無人の自動運転技術を活用すれば何とかなると考えているようです。しかし本当にそれで問題が解決するでしょうか?

ドローンが運ぶにしても、病院で処方された薬とか、書類程度なら分かりますが、たとえば冷蔵庫や洗濯機を吊り下げている光景は想像し難いです。

無数のドローンが街中を飛び回っている光景を想像してみて下さい。着地するために低空飛行もしますから、危なくて人々は外を歩けなくなるでしょう。幹線道路や線路に墜落でもしようものなら、それこそ大惨事に発展しかねません。

自動運転にしても、トラック自体が荷台に積んだ荷物を選別して各戸の玄関まで運ぶわけではありません。仮に、荷物を運んできてくれても、それを自宅の台所などに設置してくれるでしょうか? 人が介在する仕事は残るのです。

イノベーションや機械化によってある程度は人手不足が解消するかも知れませんが、こうした技術開発が物流危機をすべて解決するというのは夢物語にすぎません。