ムラとマチを捨ててきた日本の未来はやっぱり「地方分散」にあり

AIが2050年の未来を予測すると…
広井 良典 プロフィール

いまこそが政策の転換期

第三ステップ:2000年代ないし2010年代以降――転換の兆し?

最後に第三ステップは、2000年代ないし2010年代以降の時期であり、かなりの希望を込めて言えば、以上のような流れとは異なる新たな潮流や政策転換の兆しが見られつつある。

一つには、高齢化の進展により、“遠くのモールに自動車で買い物に行けない”という層が増加し、全国に600万人ないし700万人と言われる「買物難民」問題などが徐々に認知されるようになり、地域に根ざした商店街などの新たな価値が認知されつつある(余談ながら、私の実家は岡山市の中心市街地の半ばシャッター通り化している商店街だが、最近若い世代が続けてカフェを開いたり、高齢者の買い物客が増えるなど、新たな再生の兆しが表れ始めている)。

また、人口減少社会への移行の中で、過度な低密度化の問題が顕在化し、人口増加期とは異なる都市・地域モデルの必要性が次第に認識されるようになり、筆者の言う「地域密着人口の増加」に加えて、若い世代の間にもローカル志向・地元志向といった新たな志向が広がりつつある。

こうした中で、国交省などの政策の基調にも変化が見られ(「国土のグランドデザイン2050」(2014年)における“小さな拠点”の考え方など)、コミュニティなどの視点を重視した、高齢化・人口減少社会における新たな都市・地域像への模索が始まろうとしている。

しかし他方で、最近支持が下がってきたものの、いわゆるアベノミクスなど、本稿で論じているような「ローカルな経済循環から出発してナショナル、グローバルと積み上げていく」という方向ではなく、むしろ「グローバル経済から出発してナショナル、ローカルへと降りていく」という“逆”の発想の政策志向がなお強く、現在は政策の転換期ないし分水嶺と言うべきかもしれない。

それがまさに今回のAIによるシミュレーションで示された、「都市集中型」か「地方分散型」かという分岐ないし選択と重なるのである。

 

分散型、ローカライゼーション、ポスト情報化

本稿で述べてきた内容を再確認すると、私たちの研究グループは、AIを活用した日本社会の未来シミュレーションを行い、①人口、②財政・社会保障、③地域、④環境・資源という4つの持続可能性に注目し、日本が2050年に向けて持続可能であるための条件やそのためにとられるべき政策を提言する内容の成果をまとめた。

そこでは興味深いことに、日本社会の持続可能性を実現していく上で、「都市集中型」か「地方分散型」かという分岐がもっとも本質的な選択肢であり、また健康、格差、幸福等の観点からは「地方分散型」が望ましいという結果が示された。

この場合、「地方分散型」いう姿は、近年世界的にも気運が高まっている“ローカライゼーションlocalization”と呼応する社会像とも言える。

さらに言えば、ここでは言及にとどめるが、それはある意味で逆説的にも、AIテクノロジーなど「情報化」の波の先にある、次なる「ポスト情報化」の時代を示唆する方向でもあるだろう(そうしたビジョンのスケッチとして(図5)参照)。

こうした話題については昨年5月の『現代ビジネス』での拙稿「世界を正しく見るには、『グローバル化の終わり』という視点が必要だ」「『資本主義の未来』の姿~日本に残された最大の課題とは?」も参照されたい)。

冒頭で述べたようにAIやその関連技術はなお発展途上であり、私たちの今回の試みも初発的な段階にとどまり、一つの視点を提示したというものにとどまっている。

しかしいずれにしても、本稿で論じたように現在の日本社会が様々な面で危機に直面していることは確かであり、「2050年、日本は持続可能か?」という問いを正面から設定し、AI技術も活用しながら、かつ従来よりもひと回り大きな視野に立って、日本社会の未来とその選択について議論を行っていくことがいま何より求められているのである。