2050年まで日本は持つのか?AIが示す「破綻と存続のシナリオ」

8~10年後に決定的な分岐点が来る
広井 良典 プロフィール

「都市集中型」か「地方分散型」かが最大の分岐点

さて、シミュレーションの結果として明らかになったのは次のような内容だった。

(1)2050年に向けた未来シナリオとして主に「都市集中型」と「地方分散型」のグループがあり、その概要は以下のようになる。

(a)都市集中型シナリオ

主に都市の企業が主導する技術革新によって、人口の都市への一極集中が進行し、地方は衰退する。出生率の低下と格差の拡大がさらに進行し、個人の健康寿命や幸福感は低下する一方で、政府支出の都市への集中によって政府の財政は持ち直す。

(b)地方分散型シナリオ

地方へ人口分散が起こり、出生率が持ち直して格差が縮小し、個人の健康寿命や幸福感も増大する。ただし、次項以降に述べるように、地方分散シナリオは、政府の財政あるいは環境 (CO2排出量など)を悪化させる可能性を含むため、このシナリオを真に持続可能なものとするには、細心の注意が必要となる。

〔PHOTO〕iStock

(2)8~10年後までに都市集中型か地方分散型かを選択して必要な政策を実行すべきである。

今から8~10年程度後に、都市集中型シナリオと地方分散型シナリオとの分岐が発生し、以降は両シナリオが再び交わることはない。

持続可能性の観点からより望ましいと考えられる地方分散型シナリオへの分岐を実現するには、労働生産性から資源生産性への転換を促す環境課税、地域経済を促す再生可能エネルギーの活性化、まちづくりのための地域公共交通機関の充実、地域コミュニティを支える文化や倫理の伝承、住民・地域社会の資産形成を促す社会保障などの政策が有効である。

(3)持続可能な地方分散型シナリオの実現には、約17~20年後まで継続的な政策実行が必要である。

地方分散型シナリオは、都市集中型シナリオに比べると相対的に持続可能性に優れているが、地域内の経済循環が十分に機能しないと財政あるいは環境が極度に悪化し、(2)で述べた分岐の後にやがて持続不能となる可能性がある。

これらの持続不能シナリオへの分岐は17〜20年後までに発生する。持続可能シナリオへ誘導するには、地方税収、地域内エネルギー自給率、地方雇用などについて経済循環を高める政策を継続的に実行する必要がある。

 

以上がシミュレーション結果の概要だが、将来の日本社会が分岐していくシナリオのイメージを示したのが(図2)で、赤い部分のグループが「都市集中型シナリオ」で他が「地方分散型シナリオ」であり、両者が互いに離れて分岐している様子が示されている(これは2042年時点のもの)。

研究を進めた私自身にとってもある意味で予想外だったのだが、AIによる日本の未来についての今回のシミュレーションが示したのは、日本全体の持続可能性を図っていく上で、「都市集中」――とりわけその象徴としての東京への一極集中――か「地方分散」かという分岐ないし対立軸が、もっとも本質的な分岐点ないし選択肢であるという内容だった。

言い換えれば、日本社会全体の持続可能性を考えていくうえで、ヒト・モノ・カネができる限り地域内で循環するような「分散型の社会システム」に転換していくことが、決定的な意味をもつということが示されたという点である。

以上が今回私たちが行った、AIを活用した日本社会の未来に関するシミュレーションの概要だが、「地方分散型シナリオ」と言っても、現在の日本はあまりにも一極集中が顕著であるため、そのイメージがつかみにくいという人が多いだろう。

この点をもう少し明らかにするべく、次回、海外の例や戦後日本の政策展開を概括することを通じ、問題の所在と今後の方向性をクリアにすることを試みたい。

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