2050年まで日本は持つのか?AIが示す「破綻と存続のシナリオ」

8~10年後に決定的な分岐点が来る
広井 良典 プロフィール

2050年、日本は持続可能か?

今回の研究の出発点にあったのは、現在の日本社会は「持続可能性」という点において“危機的”と言わざるをえない状況にあるという問題意識である。

日本社会が持続可能性において危機的であるということは、多くの事実関係から言えることだが、特に次のような点が重要ないし象徴的な事柄と言えると思われる。

(1)財政あるいは世代間継承性における持続可能性

しばしば指摘されるように、政府の債務残高ないし借金が1000兆円あるいはGDPの約2倍という、国際的に見ても突出した規模に及んでおり、言い換えれば膨大な借金を将来世代にツケ回ししていること

(2)人口における持続可能性

生活保護受給世帯ないし貧困世帯の割合が90年代半ば以降急速に増加しており、格差が着実に広がるとともに、子ども・若者への支援――筆者が「人生前半の社会保障」と呼んできたもの――が国際的に見てきわめて手薄いことから、若年世代の困窮や生活不安が拡大し、このことが低出生率あるいは少子化の大きな背景となっていること

(3)コミュニティないし「つながり」に関する持続可能性

著名な国際比較調査(ミシガン大学が中心に行っている「世界価値観調査World Values Survey」)において、「社会的孤立度」(=家族などの集団を超えたつながりや交流がどのくらいあるかに関する度合い)が、日本は先進諸国においてもっとも高くなっていること

こうした事実に示されるように、現在の日本は持続可能性という点において相当深刻な状況にある。

 

そして、「2050年、日本は持続可能か」という問いをテーマとして設定した場合、現在のような政策や対応を続けていれば、日本は「持続可能シナリオ」よりも「破局シナリオ」に至る蓋然性が高いのではないか。

こうした問題意識を踏まえ、AI技術を活用し、また「幸福度」といった主観的な要素も視野に入れた形で将来シミュレーションを行い、日本社会の未来の分岐構造がどのようなもので、またどのような対応がなされるべきかを探ったのが今回の研究である((図1)参照)。

具体的には、以上のような関心から私を含む京都大学の4名の研究者が挙げた149個の社会指標についての因果関係モデルを構築。その後、AIを用いたシミュレーションにより2018年から2052年までの35年間の期間にわたる約2万通りの未来シナリオ予測を行った。

それらをまず23のシナリオ・グループに分類した上で、最終的に6つの代表的なグループに分類した(分類にあたっては、①人口、②財政・社会保障、③都市・地域、④環境・資源という4つの局面の持続可能性と、(a)雇用、(b)格差、(c)健康、(d)幸福という4つの領域に注目した)。

その具体的イメージについてはまず図2及び図3を参照いただきたい(これらの意味についてはこの後でさらに説明する)。

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