検証・新橋「女子高生集団過呼吸」叱られると過呼吸になる子供たち

先生はいったいどう叱ればいいのか
西脇 喜恵子 プロフィール

「バカ」という言葉も意味が変わる

一部で「先生の叱り方が悪い」という意見もあれば、「叱り方はそれほどきつくはなかった」とも報じられています。その場にいないので明確なことは言えませんが、「叱る」という行為はもちろん、叱られる側にとっても妥当なものである必要があります。

私は、ハラスメントの防止研修をするときに、「バカ」という言葉は信頼関係があるかどうかで受け止められ方が違うという話をします。お互いに信頼関係がある中で、「バカだな。ちゃんと約束は守れよ」と言われれば、「今度からはそうしなきゃ」と思えることも、信頼関係がない中で「お前はバカか」と言われると、それは不当な言葉としか受け止められません。

「叱る」という行為は、先生―生徒、親―子、先輩―後輩、上司―部下といった上下関係で行われることがほとんどなわけですから、余計に信頼関係は重要になってきます。

また、一部報道では、先生から「集合に遅れたから今後の部活動を制限する」と言われたといった話がありますが、遠足の集合時間と部活動は、本来、関係のないことです。先生が遠足の前から「集合に遅れたら今後の部活動は制限する」と伝えてあったのであればまた話は異なりますが、叱るときに叱られる側が嫌がるような条件をちらつかせるのは、単に反発を招いて終わるだけかもしれません。

「叱る」という行為の先には、叱る側の「こうなってほしい」「こうしてほしい」という期待があるはずです。それがきちんと示されなければ、叱られた側もなぜ叱られているのかわからず、「叱られる=怖い」体験になってしまうことすら、時にはあるのです。それではただ怖い思いをするだけで、叱られた中身は身に付きません

とはいえ、「どんな叱り方をすればよいか」というのは難しいところがあります。

 

過呼吸を繰り返す子への対応とは

あるとき、過呼吸を繰り返し起こすAさんについて、その友達グループの生徒が私のところに相談に来たことがありました。「励ますつもりでかけた言葉なのに、Aさんの呼吸がだんだん早くなっていくことがあって、何をどう話せばいいかもうわからない」というのです。

過呼吸は、一度体験すると、「また起きたらどうしよう」という予期不安を生じさせますが、接する側にもまた「過呼吸を起こさせたらどうしよう」「こんな言い方をして大丈夫なんだろうか」という不安が芽生えます。そして、なるべくそうならないように、言葉を慎重に選ぶようになります。気づけば腫れ物に触るような扱いになってしまうこともあります。

それが「どう話せばいいかわからない」「どういう叱り方をすればいいんですか」という話につながってしまうのです。教育現場では、だからといって、すべてにわたって叱らない、注意を与えない、真綿にくるんだ言い方で指導するというのは、現実的な選択肢にはならないだろうと思います。

私は、相談に来た友達グループの抱える「どう話せばわからない」という気持ちを認めつつ、「話しかける内容を手控えるより、『呼吸が苦しくなりそうだったら言ってね』とあらかじめ伝えてみては?」と提案しました。それが友達グループの「わからない」という思いと、Aさんの不安の両方の緩和につながるのではないかと思ったのです。

こういう話をすると、「感情的に怒るのはやっぱりNGなんですか?」と聞かれることがあります。NGかどうかといわれれば、「NGですね」とこたえますが、怒りのコントロール(アンガーマネジメント)は難しく、最近では教員向けにもそのような研修が行われています。もし、感情的に怒ってしまったときには、「感情的に怒ってしまった事実」を素直に認め、謝罪やフォローを忘れないでください。