そんな経験、ある方は多いのではないでしょうか?
今回は、パンのプロにその美味しさの科学的理由を教えて頂きつつ、いつものパンが何倍にも美味しくなるプロの技をご紹介しましょう!
パンにはクラストと呼ばれるカリッとした外側の皮部分と、クラムと呼ばれる内側のやわらかい部分とがある。
クラストカラー、つまり焼き色はパンの形やボリューム同様、パンのルックスを決定する重要な要因である。人の感性に「美味しそう」と訴えかける色あいや光沢、すなわち「つい手に取りたくなるパンのクラストカラー」を生む化学反応が、メイラード反応とキャラメル化反応である。
パンの風味は主に、焼くときにおこる「メイラード反応」と「キャラメル化反応」によるものである。いずれも複雑な反応であり、解明されていない部分も多い。
簡単にいうと、メイラード反応は加熱時にアミノ化合物と、ブドウ糖や果糖などのカルボニル化合物が反応してさまざまな香味成分などが生成される反応である。キャラメル化反応は、糖質が加熱による水分の蒸発過程で構造が変化して、さまざまな風味をもつ物質が生じる反応である。
ではあの香ばしさはどこからやってくるのか。皮部分のクラストと内側のクラムは、それぞれに異なる香りを持っており、焼き上げ直後はおのおのの香りが主張しているが、時間の経過とともに複合的なパンの香りとなる。
パンの外側、クラストの香味成分はまずメイラード反応によるもので、グルコースと反応するアミノ酸の種類や温度帯によって変化する。比較的低温域では、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、メチルブタノール類などの香味成分が生成され、さらに加熱していくとエタノール、プロパノール、アセトンなど、そして、最終段階ではメラノイジンなどの香味成分が生成される。
このような複雑な香りは「すみれの花の匂い」「チョコレートの匂い」「チーズの焼けた匂い」「とうもろこしの匂い」などさまざまに表現される。
さらにキャラメル化反応で生じる香りは、温度が上がりすぎると糖質の甘い香りより、焦げ臭が強くなる。この性質をふまえて、クラストの温度が190℃を超えないようにキャラメル化反応をコントロールしながら焼くので、好ましい香りになるのである。