ドキュメント「教員免許失効」~更新を忘れた教師の末路

知られざる「失効」の世界
田中 圭太郎 プロフィール

免許更新制導入の目的

いったいこの更新制度は何のためにできたのだろうか。

教員免許更新制について定めた「改正教育職員免許法」が成立したのは2007年6月。教員免許更新制の議論はそれ以前からあったが、文部科学省は当初否定的だった。

ところが、2006年9月に発足した第一次安倍内閣が、この年の10月に「教育再生会議」を内閣に設置し、不適格教員の排除を叫ぶようになった。2007年1月の「教育再生会議」第一次報告には「不適格教員は教壇に立たせない」「真に意味のある教員免許更新制の導入を」といった文言が並んでいる。その上で「教育職員免許法の改正が緊急に必要」と訴え、早々とこの年の6月には法律が成立してしまったのだ。

 

ただし、文部科学省は、教員免許更新制はあくまで知識技能の刷新を図るための方策としている。ホームページには、制度の目的を次のように掲げている。

「その時々で求められる教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身につけることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊厳と信頼を得ることを目指すものです。※不適格教員の排除を目的としたものではありません」

わざわざ※印を使って、不適格教員の排除が目的ではないと明言しているのは不自然にも思える。簡潔に言えば、教育改革の目玉として、当時の政権が教員免許更新の導入を推進、文部科学省は当初は抵抗したが、「不適格教員の排除ではない」ことを明記することで、この導入に妥協した――こうした経緯でできたのが、この教員免許更新制ではないだろうか。

導入の目的はともかくとして、定期的に講習を受けさせることで、最新の知識技能を身につけさせるという目的は、ある程度果たされているのだろう。ただし、更新の通知自体や、あるいは更新忘れは即失効となるような点は、制度の欠陥といえるのではないだろうか。

せめて通知ぐらいは

Aさんは「手続きを知らなかった自分が悪い」と言いながらも、納得がいかない部分もあるという。

前述のとおり教員免許更新の年度になっていることについて、学校から事前に通知はなかった。自分だけでなく、同僚たちも、制度のこともよく理解していなかった。

学校からは、教員免許を失効したことに対して処分こそなかったものの、「謝りなさい」と上司から叱られたという。更新についてはあくまで自己責任という態度では、自分と同じように危うく失効するかもしれない教員が続出するのでは、と危惧しているという。

「教員免許更新制を否定する考えはありませんが、例えば運転免許の更新と同じように、公的な機関から本人に直接通知があってもいい気がします。1月31日までに手続きをしなければならないことも含めて、1回でいいから通知は必要ではないでしょうか」(Aさん)

文部科学省によると、教員への通知を行わないのは、「住所が変わった場合に把握できないため」(初等中等教育局教職員課)。また1月31日までに手続きを締め切っている背景には、新卒の教員に免許状を交付するのが3月に集中するため、その時期を避けたいという狙いもあるという。

更新制度が導入されて来年で10年になる。大多数の教員が更新を行っていることは承知しているが、それでも少なからぬ「悲劇」を防ぐための「改善措置」がなされてもよいのではないだろうか。