ドキュメント「教員免許失効」~更新を忘れた教師の末路

知られざる「失効」の世界
田中 圭太郎 プロフィール

更新しなかったらどうなる?

旧免許を持つ教員は、2010年度から順次、更新の時期が来ている。更新の対象となった年度の1月31日までに、全ての手続きを終えなければならない。ただし、講習は期限となる1月31日の2年前から受けることができる。

注意が必要なのは、Aさんのような管理職や指導職の立場の人だ。Aさんのケースでもみたように、一般の教員と違って講習を受ける必要がないために、更新手続きを意識しない場合がある。

「学校からは、今年度が更新年度だったことも、1月31日までに手続きが必要だということも、何も説明がありませんでした。これでもしも3月末までに免許の再発行ができずに、4月を迎えていたらと思うと、背筋が凍る思いです」

Aさんは救済が可能な期間に気づいたので、免許を再発行して、更新することができた。しかし、更新手続きをせずに4月を迎えた場合はどうなるのか。

私立の場合、学校によって対応が異なる。一度失効しても、期間内に30時間の講習を受ければよい、とする学校もあるが、失職するケースもあるようだ。実際に、ある学校では、管理職の教員が3月末まで更新手続きをしなかったために免許が失効し、一旦退職扱いにした。その後再就職できるかどうかは、学校によって対応が異なるとみられる。

公立の教員の場合も深刻だ。3月末までに更新手続きをせずに免許が失効した教員は、採用が取り消しになる。教員免許更新講習を受けたうえで、その都道府県の教員採用試験をもう一度受けて合格しなければ、再び教壇に立てなくなるのだ(大学に入りなおす必要はない)。

昨年、山口県が発表した「公立小学校の教員二名の免許失効」のお知らせ

文部科学省の集計によると、2010年度から2016年度までの7年間で免許を失効した人は770人。その内訳は、国立学校の教員が17人、公立学校が266人、私立学校が487人となっている。

失効した人の中には、特例措置により、そのまま働き続けることができる教員もいる(たとえば、幼保連携型認定こども園の場合、幼稚園教諭免許を失効しても、保育士の資格があれば引き続き勤務できる、など)が、それでも決して少ない数字ではない。いったいなぜ多くの教員が更新を忘れるのか。制度の周知に問題があるのだろうか。

 

公立と私立の差

実は、教員への教員免許更新の周知は、文部科学省から個々の教員に直接行われているわけではない。文部科学省はホームページで、教員各自が修了確認期限を確認するよう求めている(国からは通知がない、ということだ)。

代わりに、文部科学省は都道府県・指定都市・中核市の自治体と教育委員会などに対して、次のような事務連絡を毎年行なっている。

・各学校などに制度の趣旨や更新講習終了確認等の申請期限及び必要な手続の流れに関して改めて周知徹底
・各学校などに対象となる現職教員へ再度注意喚起の上、当該教員の終了確認状況等の把握を適切に行っていただく等、各教員が適切に手続きを行えるように配慮するよう周知
(文部科学省「教員免許更新制における更新講習終了確認等の申請期限到来等に係る注意喚起について(事務連絡)」平成30年1月4日より)

ただ、この連絡が各学校に徹底されているかは定かではない。本人への通知がなされていないケースがあるのは、Aさんの例でも明らかだ。

公立学校の教員の場合、失職すると教員採用試験を受け直す必要が出てくるため、例えば東京都教育庁では「特に注意深く対応している」(人事部選考課免許担当)と話す。更新の対象になっている教員に対して、学校が頻繁に通知しているという。

各地方自治体や教育委員会は、教員免許更新制の導入によって、更新手続の窓口業務が新たに発生している。周知徹底もしなければならないので、負担は増える一方だろう。