ドキュメント「教員免許失効」~更新を忘れた教師の末路

知られざる「失効」の世界
田中 圭太郎 プロフィール

奈落の底

「とにかく、すぐに相談に来たらどうですか」と担当者に言われて、翌日教育委員会に出向いた。しかし、そこでのやり取りは、きわめて事務的なものだった。教育委員会の担当者は、こう言い放ったという。

「教員免許はもう失効しましたので、いまの学校で4月以降も働くのであれば、免許を再発行するしかありません。再発行のためには、3月末までに講習を30時間以上受けなければなりません」

教員免許の更新手続きは1月末が締め切り。つまり、Aさんの免許はすでに3月末で失効することになる。ただし救済手段として、3月末までに30時間の講習を受けて更新手続きを終えれば、4月1日から引き続き免許を持って仕事を続けることができるのだ。

 

1月31日までに申請していればこんなことにはならなかったのに、と悔やむ間もない。3月末までに講習を受けなければならないのだから。

Aさん「間に合わない時はどうすればいいのですか」

教育委員会「知りません。お勤めの学校で相談してください」

奈落の底に突き落とされた思いだった。

Aさんは、本来は受けなくていいはずだった免許状更新講習を30時間受けて、3月末までの数週間で全ての手続きを終えなければならなくなった。

講習を受けるには、実施している大学や一般法人、公益法人などに自分で申し込む必要がある。調べてみるとeラーニングで講習を提供している法人があり、3月20日まで申し込みが可能だった。もしかすると間に合うかもしれない。Aさんはここしかないと思い、動き始めた。

学校で仕事をしながら、4日間で30時間の講習を全て受けて、レポートとwebテストを提出。それ以外にも、卒業した大学に「教員免許に必要な単位を取得した」ことを示す証明書を取りに行った。

講習の採点が終わり、修了書ができたと法人から連絡があったのは3月最終週。すぐに郵送してもらって、必要な書類を全て持って役所へ。何とか手続きは終わり、無事4月1日からの免許状を得ることができた。

講習の受講料は約4万円。彼女の場合は複数の免許を保有していたため、免許の申請に約2万円の費用がかかった。

本当に失効したときのことを考えれば、安いものだというべきだろう。結局は、Aさんが更新の締切日や、必要な手続きを知らなかったことが原因、ともいえる。それでもAさんにはどこか釈然としないところがあった。