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自衛隊パイロットとシングルモルトの意外な関係

タリスカー・ゴールデンアワー第14回(前編)

シマジ: 藤堂さんは操縦していて失神したことはありますか?

藤堂: はい、あります。もの凄く大きなGをかけて、自分はどこまで耐えられるのかというのを体感する訓練があるんですよ。自衛隊の戦闘機パイロットは、そうやって自分の耐G性、つまり自分の限界を知っておかないと、いざ実戦となったときに自滅しかねないですから。

ヒノ: なるほど。ところで藤堂さんはいまおいくつなんですか?

藤堂: 今年36歳になります。

シマジ: 若いですね。タッチャンとわたしの半分以下ですか。

立木: シマジ、なんでもすぐおれを巻き込まないでくれる。

藤堂: じつはわたしが戦闘機の実働部隊にいたのは過去の話です。訓練の過程で腰を悪くしてしまいまして、いまはGのかからないいヘリコプターのパイロットをしています。

ボブ: ヘリコプターのパイロットに替わって何年経つんですか?

藤堂: 12年です。ですから、東日本大震災や御嶽山の噴火、それから熊本地震のときも実際に救助の現場で活動していました。

シマジ: オスプレイには乗ったことありますか?

藤堂: いや、まだ一度もないんです。でもあれは面白い航空機で、革命的な乗り物といわれています。

シマジ: らしいですね。いま、なにかと世間を騒がしていますけど、凄く優れているらしいですね。

藤堂: いろいろ取り沙汰されていますけど、実際のところ、事故率は従来の飛行機やヘリコプターに比べてぜんぜん低いんです。

立木: むかしベトナム戦争から帰還した兵士が操縦するヘリコプターに乗せてもらったことがあるけど、あれは上手かったね。カメラマンが指示したとおりに同じ場所でずっと止まっているんだよ。ホバリングっていうやつだね。

藤堂: そんな経験をされていたんですね。たしかに、ああいう方たちのテクニックはさすがだなと思うところがあります。

ヒノ: 藤堂さんはスクランブル発進の経験はあるんですか?

藤堂: いや、わたしは訓練生のとき腰を痛めてヘリへ転向してしまいましたので、実戦は経験していません。でも仲間の話を聞くと、スクランブルで上昇して対象機を見つけると、「ああ、本当にいるんだ」と、そういう思いになるそうです。

上空では、ロシア語なり中国語なりを使って警告を発するんですが、飛んでくるほうも飛んでくるほうでわかっていて、向こうから手を振ってきたりするらしいですよ。

シマジ: 手を振る!? それはなかなか平和的でいい光景ですね。

ボブ: 「ぼくたちは、ただ言われてやってるだけだから許してね」って感じなんでしょうか。

藤堂: はい、そんなところじゃないでしょうか。嘘か本当かはわかりませんが、日露戦争の末期、奉天会戦の直前の夜、日本の兵隊とロシアの兵隊がタバコを融通し合ったり、明日はよろしくね!みたいな挨拶をしたりしていた、という話を聞いたことがあります。

決して戦争を賛美するわけではないですけど、やっぱり最前線にいる者同士の意識は同じなんだなあと思いました。誰しも戦いたくはないけれど、行けと言われれば行くしかない。でもオフになれば、戦友である、と。いまアメリカと日本がまさにそうじゃないですか、ゼロ戦のパイロットとアメリカの元パイロットとの交流の話があるように。

シマジ: 最前線の兵士というのは、お互いの事情を理解し尊敬し合っているんですね。

藤堂: そうでしょうね。そこでしか生まれない友情や絆があるんだと思います。

ボブ: さて、ここからはガラッと話題を変えて、ラガヴーリンの世界に突入しましょう。

藤堂: 是非是非! 今日はそれが愉しみでここへ参りました。

〈後編につづく〉

島地勝彦(しまじ・かつひこ)
1941年、東京都生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。『週刊プレイボーイ』『PLAYBOY』『Bart』の編集長を歴任した。柴田錬三郎、今東光、開高健などの人生相談を担当し、週刊プレイボーイを100万部雑誌に育て上げた名物編集長として知られる。現在はコラムニスト兼バーマンとして活躍中。 『甘い生活』『乗り移り人生相談』『知る悲しみ』(いずれも講談社)、『バーカウンターは人生の勉強机である』『蘇生版 水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』(CCCメディアハウス)、『お洒落極道』(小学館)など著書多数。
ロバート・ストックウェル(通称ボブ)
MHDシングルモルト アンバサダー/ウイスキー文化研究所認定ウィスキーエキスパート。約10年間にわたりディアジオ社、グレンモーレンジィ社、他社にて、醸造から蒸留、熟成、比較テイスティングなど、シングルモルトの製法の全てを取得したスペシャリスト。4ヵ所のモルトウイスキー蒸留所で働いた経験を活かし、日本全国でシングルモルトの魅力を面白く、分かりやすく解説するセミナーを実施して活躍しています。