部活動の「闇」をどうにかするには、大会数や活動量を減らすしかない

放置される重大事故の根本原因とは
内田 良 プロフィール

「走るな、危険」の廊下を走ってトレーニング

こうした事態は、けっして特殊なものではない。

部活動における廊下でのトレーニングを思い起こすとよい。

部活動では、廊下は重要な練習場である。筋トレをすることもあれば、キャッチボールをすることもある。階段も合わせて活用して、長距離を走ることもある。

不思議なことに部活動が始まるつい直前まで、廊下を走ろうものなら、「走るな!」と、教師に注意されたはずである。ところが、部活動の時間帯に入るや、廊下を駆けることが正規の練習メニューとして堂々と掲げられる。

廊下を走ってはならない理由は、言うまでもなく、危険だからである。死角も多いし、狭い。フックが出っ張っていることもある。雨の日には滑りやすくもなる。

だとすれば、その危険なはずの廊下を、なぜ部活動では当たり前のように活用してしまうのか。

 

圧倒的に場所が足りない

その理由とは、学校という施設は、部活動用には設計されていないからである。

教室や特別教室(理科室、音楽室等)、体育館やグラウンドを含めて、学校施設は、基本的に授業用に設計されている。だから、授業を実施するにあたってその場所が足りなくなることはない。

だが部活動は、学習指導要領に「学校教育の一環」とは明記されているものの、それ以上はとくに何も定められていない。だから一斉に生徒が部活動を始めると、活動場所が足りなくなる。

学校管理下の災害共済給付事業を担っている日本スポーツ振興センターの資料にも、「絶対的な部活動スペースが不足しており、体育館はローテーションで使用」、「校舎や廊下に卓球台を分散させて活動していた。また、体育館内でも、隣り合った卓球台の間隔が狭い」と、練習場所の不足を危惧する報告がある。

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専門家もまったく足りない

足りないのは、場所だけではない。専門的な指導ができる人材も不足している。

昨年3月に、栃木県で山岳部の登山講習会に参加していた高校生ら8人が、雪崩に巻き込まれて死亡するという痛ましい事故が起きた。

この最大の被害者は言うまでもなく生徒たちであるが、じつは亡くなった「高校生ら8人」のなかには、山岳部顧問の教員一人が含まれている。

29歳の新任教員で、山岳部は未経験であった。山岳部の生徒らを率いるなかで、雪崩の危険性を察知することもできず、みずからも巻き込まれて命を落とした。

事故検証委員会は、根源的要因として、高体連及び登山専門部の「計画全体のマネジメント及び危機管理意識の欠如」をあげた。

200ページにわたる報告書のなかには、「高校における部活動の顧問は、必ずしも当該競技の経験者が務めるわけではなく」と、顧問らの指導技術の不足を指摘する記述もある。そして事故防止の手段として「講習会等の充実」があげられている。

しかしながら、運動部の半数がその競技種目が未経験である(拙稿「素人の部活顧問 先生の嘆き 強制的に顧問担当、種目は選べず」)であることを踏まえるならば、教員が部活動を指導するという体制自体に無理がある。

教員は、大学で専門的に登山(あるいは運動部活動)の指導方法を学んでいるわけではない。学んだのは、「教科」の指導方法である。