スポーツ庁が3月に運動部活動のガイドラインを策定したことを受けて、各自治体が休養日の設定をはじめとする、「部活動改革」に乗り出している。
休養日の設定に注目が集まっていることからもわかるように、昨今の部活動改革は、生徒や教員における負担の軽減を目指すものである。
他方で、活動時の負傷事故の軽減については、部活動のあり方に起因する重大事故が起きているにもかかわらず、いまだ議論が乏しい。
昨年12月のこと、群馬県の公立高校で陸上競技用のハンマー投げの練習中に、ハンマーがサッカー部の生徒の頭部を直撃し、生徒が死亡するという事故があった。
陸上部の男子生徒一人が女子生徒二人に指導をするため、女子用のハンマー(重さ約4kg、直径約10cm)を投げたところ、ハンマーは左にあるサッカーのフィールド側に逸れた。
それがサッカーのボールを拾いにきていたサッカー部員の男子生徒の頭部に当たり、生徒は同日病院で死亡が確認された。
事故が起きたのは午後6時25分頃で日は暮れていたものの、グラウンドは照明が当てられていた。顧問の教員は、練習を切り上げるよう指示し、すでに現場を去っていたという(産経ニュース「練習場所の境界曖昧 校長会見で『責任痛感』」)。
ここで真っ先に問題点として指摘しなければならないのは、そもそものグラウンド内において、ハンマー投げとサッカーのエリアが、とくに物理的な隔てもなく隣り合わせだったことである。
図を見ればわかるように、ハンマーが少しだけ左側にそれると、すぐそこはサッカーのフィールドである(あるいは、サッカーのフィールドを少しでも超えると、すぐそこはハンマー投げのエリアである)。
報道によれば、「ハンマーがサッカー部の練習場所に飛んできたことが以前も何回かあった」とサッカー部員が証言しているという。重大事故がいつ発生してもおかしくない状況、起こるべくして起きた事故であったと言える。
ハンマー投げの練習時には、サッカー部はグラウンドの南側半分で活動していたという(朝日新聞デジタル「陸上ハンマー直撃、高2サッカー部員死亡」)。
それなりに学校としては工夫をしていたのだろう。だが、ハンマー投げとサッカーのエリアが隣接し、そこで2つの部が同時に活動している限りは、ちょっとした偶然が重大事故につながりかねない。