安倍首相の「5年半分の映画動静」を新聞読み比べ芸人が深読みする

え、このタイミングであの作品を?
プチ 鹿島 プロフィール

萩生田が主役の映画なんて

さて、今年1月に安倍首相が「杉原千畝が読めなかった疑惑」があった。

首相はリトアニアのカウナスを訪れ、《先の大戦中にユダヤ人難民を救った「命の査証(ビザ)」で知られる外交官、杉原千畝氏の記念館を視察した。視察後、記者団に「日本人として誇りに思う」と語った。》(産経ニュース 1月14日)

このとき安倍首相は終始「杉原さん」と述べ、「千畝」を読めなかったのではないか?とネットで話題になった。

しかし私はここで擁護したい。

安倍首相は2015年の12月29日に映画『杉原千畝 スギハラチウネ』を昭恵夫人と鑑賞しているのだ。タイトルにはご丁寧にカタカナも記載されている。つまり、この映画を観た安倍首相が「スギハラチウネ」を知らないわけがないのである。可能性としてはスギハラチウネを忘れたか、それほど興味がわかなかったのだろう。「首相動静」を読んでいればわかるのだ。

 

さて、安倍首相が観た映画に『シン・ゴジラ』(2016年)がないことに気づく。あれだけ政治的な話題を集めたのに。

「巨大不明生物」(ゴジラ)が現実に東京湾に姿をあらわしたらどうなるのか。そのリアルさについて政治家も『シン・ゴジラ』について発言が多かった。石破茂氏がブログで感想を書いたり、枝野幸男氏はゴジラが現れたら「鳥獣駆除だ。防衛出動ではない」と発言している。

※《民進党の枝野幸男幹事長は30日の記者会見で、映画「シン・ゴジラ」の中で首相が自衛隊に「防衛出動」を命じたことは適切でないとの認識を示した。枝野氏は同映画の制作に協力し、29日に鑑賞した。》(時事ドットコム・2016年8月30日)

安倍首相はなぜ『シン・ゴジラ』を観なかったのか。調べてみるとこんな記事があった。

『萩生田光一官房副長官が安倍晋三首相に「シン・ゴジラ」を勧めたワケとは…』(産経ニュース2016.10.25)

安倍晋三首相は第29回東京国際映画祭のオープニングセレモニーに出席。ここで『シン・ゴジラ』について触れていた。

《首相はあいさつで、ヒット中の映画「シン・ゴジラ」について、「妻からも『リアリティーがある』とずいぶん勧められたが、どうやら前半に総理大臣は官房長官と一緒に死んでしまうということでありまして…」と冗談交じりに語り、会場の笑いを誘った。

首相は、萩生田光一官房副長官から「参考になる映画だ」と勧められたことも明かし、「やけに勧めるなと思ったら、官房副長官がずいぶん活躍をする映画だった」と感想を述べた。》

『シン・ゴジラ』の衝撃のひとつは映画館を出たら現実の官房副長官は長谷川博已ではなく萩生田光一だったことだ。首相は我々以上に「萩生田が主役なんて」と思ったのかもしれない。

しかし首相が『シン・ゴジラ』を観ないのはそれより大きな要因があったと私は考える。「小池百合子」である。

実は映画公開2日後に東京都知事選があった。公開当初から「余貴美子演じる防衛大臣が小池百合子を彷彿とさせる」という感想が飛び交っていた。ちなみに映画のエンドロールに「取材協力」で出てくる政治家は小池百合子と枝野幸男。

小池氏自身も後の都知事会見で『シン・ゴジラ』について述べている。

『小池都知事から思わぬ“反撃”受ける石破氏 ゴジラ対処での発言にチクリ』(夕刊フジ・2016年9月3日)。

あの夏からしばらくはゴジラのような勢いがあった小池都知事。安倍首相は話題に巻き込まれないように『シン・ゴジラ』を避けていたのかもしれない。