がんの「余命宣告」の正しい意味を知っていますか?

患者さんの多くは誤解している
大須賀 覚 プロフィール

どうやって余命を推定するのか?

さきほど言ったように決まったルールがないので、余命を推定する方法も様々です。一般的には、同じ治療を数百人に行った論文のデータなどや、自施設のデータをもとにして、生存曲線の中央値(50%の方が亡くなられる時期)をあげて説明するのが一つの方法です。

他には、医師自身の臨床経験から大体の期間を言われる方もいます。しかし、医師自身もこの余命としてあげた期間が正確とは思っていません。あくまで大体の目安だと考えています。

時計 時間のイメージ
  余命については、医師もだいたいの目安として考えざるをえない photo by iStock 

正確な余命宣告はそもそも困難

余命宣告というのは正確ではありません。それは医師が技量不足・知識不足だからではなく、本来のがん治療というのはとても複雑で、将来を単純に予想できるものではないからです。

同じがんに対して同じ治療をしたとしても、生存できる期間には大きな開きがあります。なぜ、そうなるのかといえば、そもそも患者それぞれの身体的特徴(体力・年齢・持病など)が違い、治療の反応が異なるからです。

さらに、がん治療を同じ治療レシピで行う場合でも、手術でどのぐらい取りきれるのか、化学療法をどこまで完遂できるのか、治療の反応はどのぐらいか、転移がどこに起こるか、再発に対して再手術できるか、再度の化学療法ができるかなど、治療が変化する要素はあまりに多くあります。

治療には様々なイベント・分岐点が時空間的に存在していて、それがどちらになるかは予測できないため、はっきり言えば予想不可能です。

実際の予後とはどのようなものか?

では、同じ病気と診断された人には、どのくらいの予後の開きがあるのでしょうか?ここに1つの例を出して解説したいと思います。ここに示したグラフは、メラノーマという皮膚のがんの患者データです。これは新しい治療群(青線)と偽薬群(赤線)の予後を比較した試験の結果です。

グラフの見方ですが、縦軸が生存されている患者さんの割合を示しています。それに対して横軸は月数です。最初の0ヵ月の時点では100%の患者さんが生存されています。月が経つにつれて徐々に線が下に落ちているのは、この時点で亡くなられた人がいることを意味しています。

  予後グラフ 

では、次にこのグラフの青線(新規治療群)のみに注目してください。この患者さんたちの平均余命を伝えようとしたら、この青線の人が50%生存されている時の約15ヵ月ということになります。

ただ、良く見てください。亡くなられているタイミングがこの15ヵ月前後に集中しているわけではありません。最初の6ヵ月の時点でも20%近くが亡くなられていますし、30ヵ月が経った時点でも30%近くの方は生存されています。

この違いを生んでいるのは、さきほど言ったような患者の状態や、転移腫瘍がどこにあるのかとか、薬物療法にどのぐらい反応が見られたかなどで変わります。もちろん、この曲線はがんの種類によっても変わりますが、どのがん種でも著しく中央値に偏って亡くなるということはほとんどなく、このような広い幅で亡くなられています。