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それでも米朝会談に「電撃破談」の可能性が残る理由

そして、そのあとに起こるのは…

「1億年経っても」…?

朝鮮半島情勢が激しく動いている。米国のトランプ大統領はイラン核合意から離脱し、北朝鮮をけん制する一方、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は中国を再訪問した。2度目の「命乞い」外交である。一連の展開を整理する。

北朝鮮の動揺を示す兆候はあった。朝鮮労働党機関紙、労働新聞が5月6日、日本との対話について「下心を捨てない限り、1億年経っても我々の神聖な地を踏めないだろう」と日本を強く批判したのだ。

この論評は「日本の孤独な境遇は実に哀れ」としたうえで、産経新聞など日本のメディアが拉致問題について「わめきたてている」が「運命の分かれ道で(日本が)いまいましく振る舞うなら、除け者の境遇を免れない」「日本は心を入れ替えろ」と指摘した。

 

同じ6日、北朝鮮の外務省報道官は朝鮮中央通信の質問に答える形で、米国が経済制裁や人権問題で圧力を加えていることについて「我々の非核化の意思が(米国の)制裁と圧力の結果であるかのように世論を誘導している」と批判した。

北朝鮮はこれまで、6月上旬に予定される米朝首脳会談の実現に向けて、対話ムードの盛り上げに懸命だった。ところが、記事と報道官発言は一転して、日米をけん制した形である。

それでも米国については表現が柔らかく、おずおずとした感じがあるが、日本は「1億年経っても」などと独特の強い表現で非難している。よほど気に障っているのか、なんとも涙ぐましいほどだ(笑)。

1億年も経ったら、北朝鮮という国があるかどうかも疑問だが、そこは措くとしよう。この記事を読んで、私は「これは先週、公開した私のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55551)に反応したのか」と思った。

私は先週のコラムで、北朝鮮が本当に「いい子」になったかどうかを確かめるには「日本人拉致被害者を解放し、かつ中短距離ミサイルを撤去するかどうか」を見ればいい、と指摘した。この2つの問題こそが、彼らの真意を示す「リトマス試験紙」になるのだ。

彼らが「いい子」になって国際社会と調和していくつもりなら、拉致問題を解決しないわけにはいかない。隣の韓国や日本を狙う中短距離ミサイルも撤去するのは当然だ。

だからこそ、この局面で「日本は米国と歩調をそろえて、一段と圧力を加えるべきだ」というのが、私の主張である。実際、トランプ大統領は水面下の事前交渉で「非核化とともに拉致問題を持ち出した」という観測もある。

彼らは拉致問題を持ち出されるのが、よほど嫌だったに違いない。拉致問題の重要性を強調した産経報道や私のコラムが急所を突いていたからこそ「1億年」などという突拍子もないセリフが出てきたのだ。

北朝鮮にとって、拉致と中短距離ミサイルは交渉の「のりしろ」である。非核化をめぐって米国と厳しい交渉になっているのに、拉致や中短距離ミサイル撤去でも譲歩したら、彼らは全面敗北になってしまう。さすがに「それは避けたい」と思ったのだろう。

すなわち、今回の記事は彼らの「いい子になる」という話がまやかしであることを物語っている。トランプ氏が会談で拉致問題を持ち出す前から、強い拒絶反応を示したのだから、彼らの姿勢は何も変わっていない。

 
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