認知症に「性欲ギャップ」…高齢者の性を巡る深刻すぎる問題

田原総一朗×宋美玄
田原 総一朗 プロフィール

生身を諦められるか

――結局、宋さんとしては、男と女の性欲の関係は、どうすればよいと考えていらっしゃるのですか。特に、熟年の場合……。

「まず、男性には、生身の女性に受け止めてもらう以外の性欲の処理の方法を身につけてもらうことです」

――マスターベーションですか。

「マスターベーションもあるけれども、男性は割合にビジュアルな刺激を求めていて、ストリップ劇場に行くとか、アダルトビデオとか、女性のヌード写真を集めるとかね」

――そういえば『週刊現代』とか『週刊ポスト』、『週刊大衆』、それから『フラッシュ』など、こういう週刊誌を読んでいるのは、多くが中高年の男性なのですね。だから、いずれも若い女性のヌード写真が売り物で、それも袋とじで際どさを競っている。そして、健康や病気、セックスに関わる読み物が多い。

「だけど、最近は、中高年の男性がアダルトビデオの方に行って、動かないヌード写真は、いまひとつ引っぱりにならなくなったようです。裏ビデオをまかり通らせるとか、とにかく過激なビデオが多くって……」

――過激でないと売れないのでしょうね。

「過激が、どんどんエスカレートしているのではないですか。アダルトビデオって、見る側に強い刺激を与えるために、無理な体位を取らせていますよね。あれだけ見た人間は、あれが正常位だと誤解してしまいますよ」

 

――ところで、宋さんは、いわゆる風俗店を取材されたりしますか。

「取材というか、実際に風俗で働いている患者さんがいっぱい来るんですよ」

――もちろん女性ですよね。彼女たちは、なぜ風俗で働いているのですか。

「けっこう、いろいろなんですがね。お母さんというか、50、60代で働いている人もいます。そういう人しか働いていない風俗店もあります」

――高年齢女性専門風俗店ですか。

「なかには、職業に貴賎はないというか、誇りを持ってやるという女性もいるとは思いますよ。もちろん、ほかに職業が選べなかった、というケースが多いとは思いますがね」

――稼ぎ方としては、かなりいいのですかね。

「それが、バブルの時代には、アダルトビデオに出るだけで100万円以上とか、言われていましたが、今は安いようです」

――具体的に、どのくらいなんだろう。

「多い人は、それは100万円近くもあるでしょうが、最低レベルだと1本出演して5万円程度で、だから、それで生活をしようと思ったら、1カ月に5~6本出なきゃいけないことになります。しかも、いつまでも続けられるわけでもないし……」

――そんなに安いということは、やる女性が多いということですね。

「非正規のサービス産業だと、20万円取れませんからね」

――たとえば、デリヘルの女性は、客にどのくらいの時間つき合うのですかね。

私が問うと、宋さんに代わって、同行の現代ビジネスの編集者が、60~90分だと答えた。それで、客は2万円程度出して、店が半分以上取るので、女性に入るのは1万円だというのである。

――女性は、それを1日に何回もするのかな。

すると、編集者は、「2回、3回はする。人気のある女性だともっと多いことも」と答えた。

――それでは、デリヘルの女性は、客に、どのようなサービスをするのか。 

私が問うと、やはり編集者が、「ホテルの部屋かどこかで、女性は裸になって、手や口で、いわば本番以外の、いろんな性類似行為をして客を満足させるのですよ。場合によっては、本番をやるかもしれない」と答えた。

――ところで、奥さんはいない、しかし風俗店に行くような金もない。こういう高齢者を「下流老人」と言うようですが、そういう「下流老人」はどうすればよいのですかね。

「最終的に自家発電、マスターベーション……。だけど、いま、いわゆるおとなのおもちゃというのがありますよね。これ男性用も、女性用もあるのですよ。だけど、これではわびしさが拭い去れないという人もいるでしょうね。男女の性欲に歴然とした差がある以上、性欲全てを生身の人間に受け止めてもらうというのは無理なので、高齢者の性欲というのは本当に難しい問題です。

財務省事務次官の女性記者に対するセクハラ発言が大きな問題になっていますね。あれも一種、高齢男性が自分の性的欲求をうまく昇華できないために起こったのではないかと捉えることもできるんじゃないでしょうか。セクハラについての問題意識を社会全体で高めると同時に、高齢者の性についてにも向き合っていかないと、いろいろと深刻な問題が出てくるだろうな、とは危惧しています」

宋美玄さんは深刻な口調で言った。 

 (了)

(次回、田原さんは宋先生がお話になった「アダルトVR」を体験するために、大手AVメーカー、ソフト・オン・デマンドを訪ねます。初めてVRを体験した田原さんの口から飛び出した、アダルトの世界の未来についての、驚きの考察とは――)

撮影/村上庄吾