認知症に「性欲ギャップ」…高齢者の性を巡る深刻すぎる問題

田原総一朗×宋美玄
田原 総一朗 プロフィール

認知症と性欲

――宋さんの『大人のセックス』読みました。非常に一生懸命に書いておられるので、びっくりしました。タイトルから想像していたのとは違って、本当に真剣に、一人一人の性の問題に一生懸命に取り組んでいらっしゃる。繰り返しになりますが、熟年女性に、夫のピストン運動によって局部に痛みを感じると訴えられたとき、彼女の夫にも来院してもらって、一緒に話をしたらどうですか、と思うのですが。

「パートナーと一緒に来てもらうのがよいのですが、パートナーには来たがらない人が少なくなく……。それに認知症みたいな感じになっている人もけっこういるんです。認知症のような症状が進んで、それで奥さんが嫌がっているのも分からず求めてしまう」

――認知症みたいな……。認知症みたいになると、性欲はどうなるのですか。

「それが、性欲がむき出しになって、遠慮というか、羞恥心が薄れて、奥さんに強引にセックスを求めて、無理矢理に脱がしたり……。奥さんの方は耐えきれなくなって……」

――それはもう、レイプに近いですね。

「そういうの、あるんです。どうすればいいんかと。家族でもて余して、施設で隔離みたいなことにもなります」

――そうか。本能のまま、ということになってしまうのですね。

「難しい問題ですね。性欲って、ないものを湧き上がらせたり、あるものを抑えるのは難しいんです。犯罪者などが再犯を防ぐためのセッションとか、そういうのはあるのですが、夫婦間の性のことを話し合って解決、というのはうまくいかないですね」

――夫婦が何組か集まって、夫婦間の性欲のギャップなどについて話をするというのを、宋さん、おやりになればいいじゃないですか。

「やってみたら面白いかもしれないけれども、温度差のある夫婦で、夫が、『僕はセックスの話がしたい。そういう夫の集まりに行ってみよう』といって、奥さんが乗りますかね。嫌がるのではないですか」

――そうですか。ダメですか。

「実は、私がよくやっているセックスレスのカウンセリングには2パターンありまして、セックスはしないけれど、パートナーシップはうまくっている場合。この場合は、うまいセックスの方法を取り戻せば、2人はやり直せます。だけど、パートナーシップが崩壊している場合は、相手の顔を見るのも嫌なわけだから修復のしようがありません」

 

――なるほど、パートナーシップがうまくいっている場合は取り戻せるわけだ。

「ただ、セックスレスになった原因は、実はもっと根が深いのが少なくないのです。たとえば、子どもが生まれて、身体が大変なときに、セックスを求めて来た、とか。舅がセクハラしてくるのを止めてくれなかったとか、いろいろあるんですよ。そういうのが奥さんのなかには地層のように積みあがっていたりして、短期的な解決はそもそもが難しかったりするんです」

――夫の浮気というのもあるでしょうね。

「でも、最終的な結論を言うと、ライフパートナー、つまり人生の伴侶とセックスパートナーというのが、ずっと一致するというのは、私は難しいのではないか、と思います。私は法律の専門家ではないので、それが違法行為であるのはよくわかるのですが、本当にセックスについて真剣に悩んでいる人たちの話を聞くと、そのパートナー同志では解なしというのが多いのです。

もう、この2人では、どうとも解決のしようがないことがあある。かといって、2人は別に離婚などを望んでいるわけではない、そんなとき、『週刊文春』がなんていうかはわかりませんが、不倫を容認するケースもあるのではないですか。不倫まで行かなくとも、性産業を利用することを認める、とか」

――たとえば、オランダでは売春は罪ではないようですね。

「それがプロかどうかは別として。それを容認する、しないの話ではなくて、夫婦間で解決できないことがいくらでもあります。だから、高齢者の性の問題になると風俗店とか、デリヘルなどの例が出て来ますが、男性としては、妻とやり直すにしろ、風俗にせよ、結局、生身の女性に性欲を受け止めてほしいということなのでしょう」