『池の水ぜんぶ抜く』人気の理由 。なぜこんなに心地よいのか

攘夷・勧善懲悪・神様の気分…
堀井 憲一郎 プロフィール

時間は巻き戻せない

「地球上の生態は、地球誕生からこのかた、一度たりとも止まったことはなく流動しつづけている」と生態学者は教えてくれる。

どの瞬間も瞬間でしかない。

「とてもよかった理想的な生態の時代」というのは存在しない。

つまり「そこへ戻したほうがいい生態」というのは、現実にはどこにもないのだ。誰かの頭の中にしか存在しない。

いまここにある生態系が、地球の意志としての生態系である。

そこをまず認めるしかない。ブラックバスにとっては、日本はとても住みやすい場所なのだ。彼らは安住したい。我々はそれがただ心地悪いだけである。

ちなみに、在来種がとても少なくなっていて、外来種が繁殖している生態系で、「在来種を守るため外来種だけ排除する」という行動を起こしても、無駄になることが多い。

在来種が少なくなっているとしたら、彼らはすでに負け始めているのだ。その原因は、多くの場合、外来種ではなく環境変化(だいたい人間が引き起こしたもの)にある。外来種の侵入はその変化後の仕上げにすぎない。

その生態系の上位にある外来種を完全に取り除いたところで(それができたとして、だけど)、負け始めた在来種が大きく復活する可能性はとても低い。上位層に“新しい別の種”が入ってくるものである。そういう事例がいくつも報告されている。

簡単にいえば「時間は巻き戻せない」ということに尽きる。

みなさんご存知のとおりである。

「美しい過去に戻そう」という行動は、だいたい無駄になるし、いろんな面倒を引き起こしやすい。

それでもやりたい、というのを止めることはできないが、興味ない人まで巻き込まないほうがいいとおもう。それはまあ、「ゴルフは全人類にとって善である、すべての人はゴルフをやるべきだ」と言ってまわる人くらいには迷惑だから。

ただ「在来種と外来種に分けて、在来種のみ守りたい」というのは、どうもわれわれの原初的な感情を強く刺激するようだ。なかなか無視しにくい欲望なので、多くの人を巻き込みやすい。

テレビはそこをうまく利用している。

だから見ていておもしろい。

おもしろいなあ、とおもう人と、これは善いことなんじゃないか、と感激する人と、なんだか余計なことをやってるなあ、とおもう人と、それぞれが適当にいるのが、いちばんいい気がする。

どの考えが正しいということは言えない。

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