那須塩原市駅前図書館(仮称)の外観イメージ/筆者提供

Amazon、TSUTAYAに負けない「賑やかな」図書館の可能性

「高価な貸本屋」のままでは未来がない

最後に図書館に訪れたのはいつだろう。

TV、インターネット、ゲームなど、世の中には本以外にも娯楽があふれ、しかも進化し、増え続けている。それでも本を望む人はAmazonやTSUTAYAなどのサービスを利用すれば簡単に手に入るのだ。そのような時代に、わざわざ図書館に出向く理由を見つけられない。

2019年春竣工予定の「那須塩原市駅前図書館(仮称)」。自治体主催のコンペで150もの応募があった中、UAo株式会社の建築家・伊藤麻理さんの設計が選ばれた。このような時代に、彼女はどのような図書館を目指すのか。

注目の女性建築家が、今後の図書館の「あり方」を語った。

取材・文/小林有希

本を貸す費用、「1冊当たり500円」!?

まず基本的なことからお話しすると、図書館の利用者は、試験前や夏休み中に学生が多少増えるくらいで、普段は本好きな人と子育て中の母親と子ども、高齢者が中心です。

地方都市では年々人口が減少しており、図書館の利用者数もそれに比例します。ましてや、今はネットで本を購入でき、わざわざ図書館に行く必要がありません。

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一般的に図書館は、蔵書数・貸出本数・利用者数の多さで評価されます。

しかし那須塩原市の図書館の場合、建築費用や年間運用費用、そして見込みの利用者を含めても、本を1冊貸すのに500円もかかることがコンペ時に算出されていました。言い換えれば、どのような建物をつくっても割高なコストが変わることはありません。

設計で、割高なコストをどのように正当化できるか。図書館の評価軸を新しく提案できるように、建物だけでなく「施設をどう利用するか」まで踏み込むことが必須でした。

目指したのは「賑やかな」図書館

一般的に図書館は「静かにしないといけない、会話ができない場所」と認識されていると思います。

そんなイメージから脱却しようとTSUTAYA図書館が登場し、地方都市の図書館が注目されるきっかけになりました。図書館の利用者が増えた点では貢献していると思いますが、サービスの中身はカフェ併設の本屋と大差ありません。

ニュースでも注目され、地域活性化の起爆剤となりましたが、結局は後に続かない打ち上げ花火。短期間で高い成果を上げる民間企業とは異なり、公共施設である図書館はその地に代々根付いて咲く花にならなければいけないのです。

 

では、公共施設に人を集め、地域活性化の芽にするにはどうしたらいいか? 

一昔前まで人が自然と集まっていた公民館は今や機能していません。車社会の地方都市で、物資を手に入れるのも、人と接するのも不便だった時代は、公民館を中心に地元住民同士で助け合っていましたが、今はオンラインショップやSNSで簡単に叶えられます。

とはいえ地元のコミュニティがゼロになったわけではありません。子育てママたちがファミレスに、部活帰りの学生たちはお金のかからないコンビニの前に集まっています。

裏を返せば、車をつかえない人はそこしか行く場所がないということ。さらに同世代だけで集まり、上下の世代がつながる場所がないため、伝統の祭りや行事が継承されなくなっている地域もあります。

場所があるのに、人が集まらない。人が集まっているのに、魅力的な場所がない。
そこで、那須塩原市駅前図書館はフリースペースのある公民館的な役割をもち、コミュニケーションが活発になる「賑やかな」図書館を目指したのです。

ただし、ここで注意したいのがラウンジ的に利用するTSUTAYA図書館とは、「賑やか」に話される内容が違うということです。