成功者が「性暴力」で人生を棒に振ってしまう根本理由

パワーの行使と乱用の違いを知ろう
藤岡 淳子 プロフィール

被害者の持つパワー

事件の起きた状況では、立場によるパワーの差によって、被害者は圧倒的に不利な立場に陥っているが、実際には、被害者にはちゃんと人としてのパワーがある。

今回、記者と高校生および両親が、きちんと訴え出たことには敬意を抱かざるをえない。

日常生活で関わりのある、パワーを持っている人を告発するというのは、現実には並大抵のことではない。

筆者も表沙汰にはできないいくつかの事件に関わって、黙っていることについて、不甲斐ない気持ちや情けない気持ちを抱いている。

しかし、直接の被害者でもなく、無暗に口に出すことはできない。それは「闘い」であって、勝てそうにない相手に挑むことであり、さらに傷つき、時間とエネルギーを消耗することであるのは目に見えている。覚悟と、共に戦ってくれる仲間がいないことには、踏み出せる一歩ではない。

大きなパワーとなるのは、「被害者の落ち度」などという戯言に惑わされることなく、力となってくれる人びとに事実を明かし、傾いたパワーバランスを均衡に戻すことだろう。そのためには、周囲の人々の理解とサポートが不可欠である。

 

筆者は、学生などから、セクハラ被害の相談を受けることも多いが、まずはテレビ朝日の記者がやったように、事実を確認するために録音する、あるいは少なくとも事実を克明に記録することを勧める。

告発の準備を整える。その上で、安心と安全を確保するために信頼できる人に相談し、自分を守る体制を整える手伝いをする。加害者の嘘や詭弁をどのように見抜き、反論するかを助言することもある。

そうした対応策で、パワーの均衡がとれてくれば、それで収まっていくことも多い。初期の段階で、パワーの乱用をきちんと認識し、周囲の人々と協働して、対応をしていけることが極めて重要である。

とはいうものの、被害に繰り返しあい、あるいは極めて深刻な危害を加えられ、しかも誰からも助けを得られない状態が続いていると、本来は持っている力を無力化されて、被害に遭ったことが自身のせいであるかのような思考にはまっていってしまうこともある。

周囲の人々が、加害する側の言い訳や詭弁を見抜き、被害者の置かれた状況を理解しサポートすることは、被害の悪影響を少しでも低減させ、ひいては加害行動を減らすために不可欠なピースとなる。

そんな風に言われることは被害者にとっては心外かもしれないが、福田氏や山口氏は、ようやく告発されてよかったね、もっと早く告発されていればよかったのにね、でも今からでも遅くないから、やり直そうと言いたくなる。

もっと早く、ことが小さなうちに訴えられ、それが誰かに耳を傾けられ、対応がなされていれば、被害者を少なくできたし、加害を行った人にとっても、失うものや回復にかかる時間と努力も多少は少なくできたのにと思う。

自身の犯罪行動や落ち度を公開され、その過ちを認め、謝罪し、償いの行動をとっていくことは、実際にはとても大変なことである。

本当に責任を果たすとなると、自身の生き方を振り返らなければならなくなるからである。それを行ったのであれば、筆者は、過去の行動に関わらず、その人にも敬意を感ぜざるをえない。

加害を行った人のことを考えるのであれば、周囲の人々は、かばうとか、非難するとか、はじき出すと言うよりは、共にいて、どこがまずかったのか一緒にきちんと考え、回復の努力を見守ることがよいと思う。

性犯罪の被害と加害、セクハラ、パワハラを減らすには、私たち一人ひとりが、パワーの行使と乱用の違いについて知り、乱用する際に使われる言い訳や詭弁に気づいてそれを許容せず、早めに健康な生活に戻ってくる手伝いができるようになることが今望まれている。