田舎から東大入って絶望した彼に北海道の単科大学教授が伝えたいこと

釧路に戻り「文化と教育の格差」克服を
水野 俊平 プロフィール

「ここにいたら夢は叶わない」と思わせない努力

平昌五輪の女子カーリングで銅メダルに輝いた吉田知那美選手は、帰国後、地元である北見市常呂町での報告会で次のように語っている。

「この町、何もないよね。小さい頃はここにいたら夢は叶わないんじゃないかと思っていました。でも今は、この町じゃなきゃ夢は叶わなかったと思います」

「この町(北見市常呂町)」がどんなところか知らない方のために、若干説明を加える。もともとは常呂郡に属する町であったが、2006年に北見市と合併。オホーツク海とサロマ湖に面した漁業・農業の盛んな地域で、人口は4000人ほど。この地域唯一の高校である北海道常呂高等学校の全校生徒は30 人である(昨年5月現在)。ちなみに、吉田知那美選手の妹・吉田夕梨花選手はこの高校を卒業している。

常呂町出身の日本女子カーリング代表  photo by gettyimages

何気なく発せられた吉田選手の言葉は、図らずとも「文化と教育の格差」の克服に何が必要なのかを示唆している。彼女たちがオリンピックに出場し栄光を掴めたのは、地元が寒冷地でウィンタースポーツに適した土地柄だったからだけではない。「何もない町」でも、志を見出し、天性を発揮できるように導いてくれる指導者がいたためである。前出の釧路出身の男性はこう指摘する。

「格差を埋めるには高校や大学側の提案が重要と考えます。高校では、入学時から進学についての意識づけが必要で、高校卒業後のビジョンを学生に丁寧に説明し、奨学金などによる補助もある事など進路指導の改善も必要ではないかと考えます」

 

「大学としては早期の進学説明会やもしくは出張講座などで進学はどう意味を持つのか、進学がもたらす将来へのメリットを学生に見せる事で、大学の質・学生の質も変わるのではないかと思います」

要するに、高校や大学の教員の創意工夫が重要だということ。確かに「田舎」において「文化と教育」の大切さを教えられるのは教員くらいしかいない。何と言っても若者と最も長く向き合っているのが教員だからだ。かくいう私も恩師からの刺激で「田舎」から脱出したのだから。

その私も現在は地元に帰り、地元の大学で教壇に立っているわけであるが、お前は果たして教え子たちに多少なりとも知的な刺激を与えているのか、と問われれば、お恥ずかしいことに自ら首を傾げざるを得ない。教え子たちの強い地元志向を嘆くばかりで、それに真剣に向き合ってこなかった自らを大いに恥じ入る次第である。

授業をこなすのは教員の当然の務めであるが、教え子の知的な視野を広げ、自らの可能性に気付かせることも教員の重要な使命。私にとっては、いささか勝ちすぎる荷ではある。

阿部幸大氏は東大を経て現在はアメリカで学究に励まれているようであるが、「文化と教養の格差」克服のために、ぜひとも将来は釧路に戻られ、地域の若者に薫陶を授けていただきたいと思う。

東日本大震災の直後に200億円もの義援金を送ってくれた台湾の人々。その影響で、台湾へ旅行をする日本人の数は年々増えています。それでも、私たちは台湾人の普通の若者について、ほとんど何も知りません。台湾の若者の学校生活、受験戦争、兵役、就活……、3年以上に渡る現地取材を重ねて知った、台湾人の意外な日常生活。