田舎から東大入って絶望した彼に北海道の単科大学教授が伝えたいこと

釧路に戻り「文化と教育の格差」克服を
水野 俊平 プロフィール

さらに、他地域でよく知られていないのが「北海道民は極めて内向きな人々だ」ということである。ここで言う「内向き」とは「内向的な性格」ということではない。「北海道民は北海道から出ようとはしない」ということだ。

これは様々な統計が裏付けしている。文部科学省の学校基本調査(平成29年度)によると北海道の大学等進学率は44.5%。ところで、この大学進学者であるが、その多くが「地元の大学」に進学するのである。旺文社・教育情報センターの調べによると、地元の大学に進学する比率(「残留率」という)は、67.1%。これは愛知県の71.4%に次いで全国第2位。3位は東京で、65.7%。

統計を見る限り、地元の大学進学率が高いのは都市部と北海道、沖縄だけ。言い換えれば、北海道は大部分が都市部でもないのに地元の大学に進学する比率が高いのだ。大都市である札幌圏でもそうであるが、その他の地域でも地元の大学に進学しようとする傾向が顕著である。

photo by iStock

これは北海道が海で隔てられているため、他地域の大学への通学が困難なためでもある。反対に北海道以外の地域から北海道内に進学するケースは北大など国公立大学を除いて、極めてまれ。北海道内の私立大学は北海道出身の学生ばかりで占められている。大学進学者にしてこうなのだから、専門学校(専修課程)進学者や就職者がより地元志向なのは自明である。

就職先も地元志向

さらに大学卒業者の就職先も道内が多い。リクルートキャリア・就職みらい研究所の調査「2017年卒大学生の地域間移動に関するレポート2017」によると、北海道の大学生の地元就職率(卒業大学が所在する地域での就職率)は56.8%。新潟、愛知、愛媛、沖縄などと並んで高い数値を示している。北海道では道内の大学に進学し、道内で就職する、というのがきわめて一般的なのである。

東京の地元就職率も高いのだが、東京の場合には他地域から進学してきた大学生の比率が高いため、厳密には「地元で就職している」とは言い難い。このレポートでは、北海道民の地元志向の原因について「住み慣れた生活環境に加えて、他地域への順応不安などの理由が見られる」と分析している。「開拓者精神」「フロンティア・スピリット」とはおよそかけ離れた傾向であることが分かるだろう。

阿部幸大氏が指摘している「文化と教育の格差」という問題は全国的に見られる問題だと思われるが、こうした北海道ならではの事情、北海道民の気質によってさらに拍車がかかっているのではないかと思われる。

地元で生まれ、地元で育ち、地元の大学に進学し、地元で就職する。それで満足するならば都市部と地方の間に存在する文化と教育の格差に悩む必要などないし、そもそも格差の存在に気づきすらしないだろう。

 

こうした現象も、若者が地元に残ってくれるという点では、好ましいと言えるかもしれない。若者が皆、都市部に出て行ってしまったら、地元に残って地域に貢献する人々がいなくなり、さらに深刻な事態となるだろう。

ただ、阿部氏が指摘しているように、「文化と教育の格差」に気づかぬゆえに地元から出て行くことができず、青雲の志を抱き、天性を秘めた若者があたら好機を逸しているとしたら、それは地域にとっても大きな損失である。厄介なことに、この問題は国や自治体に公共投資を求めたところで解決するような問題ではないのである。では、一体どうしたらいいのか。