女性のケガレって何…? 土俵の女人禁制は「出産排除社会」の原型だ

「中途半端な伝統」はもうやめよう
落合 恵美子 プロフィール

この謎に取り組んだ民俗学者は、神様には2種類あると言う。

神社の神様は、たとえ安産祈願で有名な神社であっても、産穢を避ける。しかし出産に立ち会ってくれる神様もいる。「ウブ神」と呼ばれる神様である。

ウブ神は産小屋を建てたとき(古来は産小屋はお産のたびに建てては取り壊すものだった)、あるいはお産の直前に産婦の夫などが迎えに行ってやってきて、産後3日から7日ほどで帰ってゆく。産後にウブ神を呼ぶところもある(宮田登『神の民族誌』岩波書店 1979年)。

ウブ神の本質については、民俗学の分野でさまざまな議論があるが、まだ定説はない。土地の神である産土神、山の神、箒神、便所神(ヒット曲にもなった、あの美しい「トイレの神様」)などがウブ神とされることが多い。稀ではあるが荒神(カマド神)もウブ神とされることがある(大藤ゆき『児やらい』平凡社)。

 

神様には2種類あるというのは、けっして突飛な説ではない。

神無月(旧暦10月)には全国の神々が出雲に集まることになっているが(だから「神無」月と言う)、そのときにも家に残る神々がいる。荒神や水神など神棚ではなく土間に祀られるような神々である。

これらは神棚や神社に祀られる神々よりも古いタイプなのだと民俗学者は考えている。箒神、便所神も無名の古いタイプの神々である。

〔PHOTO〕iStock

産小屋と大嘗宮

土間といえば、お産の場所としてさきほど紹介した。

土間にはカマドがあり食料や生産用具等の置き場とされたが、しばしば隅に竪穴を掘ってもみ殻やワラを敷き、身分の低い者や忌のかかった者の寝所にすることもあったという。

そこだけで住居の主要な機能が備わっていることから、建築学者で民俗学者の今和次郎は土間には竪穴式住居の頃からの伝承が埋蔵されていると考えた。

産小屋も、京都府天田郡三和町大原に伝わる古い形では、茅葺きの天地根元造で内部は砂の敷き詰められた土間になっている。出産のときは内部にワラを12束、閏年なら13束ならべてムシロを敷き、入口に魔除けの古鎌を吊るしたという。

地面に伏し土間で寝起きすることは、忌籠り(いみごもり)の作法であった。平安時代の貴族は近親の葬儀のあと「土殿」で忌籠りをした。それは殿舎の床板をわざわざはずして地面の上に起居するようにしたものだった。

天皇が忌籠りをして皇祖神を祭る大嘗宮の正殿は、後世まで萱葺き萱壁の黒木造という古式を保ち、内部には平安時代頃まで束草といって青草を束ねて地面に並べ、その上に竹のスノコをわたしムシロを敷いていた。

産小屋と大嘗宮の造りがほぼ同型であるというのは興味深い。地面と青草の精気により生命力を強めるという原始的信仰を、古い時代の居住感覚を通して甦らせたものという(高取正男『神道の成立』平凡社 1979年)。