「宿命」は変えられるのか?「脳は環境が作るか、遺伝子が作るか」問題

日本人の脳に迫る②
中野 信子 プロフィール

「幸福度」にも遺伝が関係…?

犯罪心理学者のレインは、双子を対象とした研究の結果、子どもの反社会的行動の40%から50%は、遺伝によって説明できると主張しています。さらに、両親、教師、同世代の友達という3者の情報提供者の評価を平均して、対象となる子どもが実際どのように行動しているかを抽出したところ、環境要因はわずか4%に過ぎず、残り96%が遺伝によるものであったとしています。

また、同じく心理学者のメドニックは、デンマークにおける養子の犯罪を調査し、犯罪者を実の両親に持つ養子が成人後に犯罪者になる割合を、非犯罪者を実の両親に持つ養子よりも高いとしています。

 

イギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドン発達精神病理学教室教授のヴィディングが双子の幼少期の成長に関する研究をし、顕著にサイコパス的な特徴を持つ双子の反社会的行動は遺伝の強い影響を受けており、要因の81%が遺伝性である、としました。

ただ、こうした調査結果は注意深く取り扱う必要があります。この記事を読まれた方も、人権への配慮ということを念頭に置いて情報を取り扱っていただけたらと願います。

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さて、反社会的傾向に関するデータばかりでなく、幸福の感じ方(幸福度)といった一般的には数値化しにくいと考えられている尺度についての調査もあります。個人の幸福度には遺伝的な影響があるのでしょうか。あるとすればその影響はどの程度なのでしょうか。

行動遺伝学者のリッケンとテレゲンらのグループによって行われた「幸せな双子の研究」と呼ばれる有名な双子研究があります。彼らはミネソタ双生児登録からデータを入手し、ミネソタ州で生まれた双子たちを追跡調査しました。

その結果、一卵性双生児のうちのひとりの幸福度を調べれば、もうひとりの幸福度の値がほぼ推定できる、ということがわかりました。一卵性双生児の幸福度は、環境が違っていても似通っていたのです。また環境要因として、収入額、配偶者の有無、職業、宗教などについても調査されています。

収入額が幸福度の変化に与える影響は2%以下、配偶者の有無が与える影響は1%以下でした。職業、宗教の影響が小さいことも明らかになりました。