政府は「人口減少」に無関心?地方創生が地方を壊す未来がやってくる

「地方消滅」から4年、何が進んだのか
山下 祐介 プロフィール

政府にこそ求められるPDCAサイクル

要するに、地方創生の真の目的はもはや「ローカル・アベノミクス」にあり、人口にはないのではないかと疑われるのだ。すでに、目的(人口)と手段(経済や雇用)が入れ替わっているのではないかと。

ちなみに少子化については、近年の数値はこうなっている。

日本の出生数は、地方創生本部が設置された平成26年の1,003,539人に対し、翌平成27年には1,005,677人と若干、回復している。

ところが、地方創生本格稼働後の平成28年には再び減少に転じ、出生数976,978人と、ついに100万人を切ってしまった。

しかもこの減少傾向はその後も止まらず、平成29年はさらに減って94万1千人になるとの速報値が出されている。

これに対し、出生率そのものはこの間、上がり続けているはいるのだ。

 

産む女性の実数が減少しはじめているので、出生率は上がっても出生数は増加にまでいかないのだが、日本の少子化は必ずしも止まらないという状態ではないのだ。ただしこの出生率の回復については地方創生に取り組む以前から上向き傾向にあることがわかっているから、そこに事業の効果がどれくらい関わっているのかはしっかりとした検証が必要であろう。

そして東京一極集中(2地方への新しい人の流れをつくる)については、先のKPI検証にもあったように、東京圏への転入超過数はますます増加しており、東京への人の移動はむしろ強まっているのであった。

各地で進めている「稼ぐ力」の創出事業が、人口増大に結びつくかどうかはわからない。また事業費の投入が一時的に雇用を生んで、人口を増やしたとしても、それが事業終了後も持続するかは未知数である。場合によっては、事業がかえってストロー効果を持ち、人口減につながることさえありうる。

こうしたことをチェックし、改善していくのが本来のPDCAサイクルのはずだが、むやみに「稼げ」や雇用(ローカル・アベノミクス)が強調されたので、そうしたことはもはやどうでもよいことになり、とりあえずやっている事業の効果として、雇用がどれだけ増えたかだけが、重要視されることになってしまったのだろう。

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すべては「まずは仕事から」という、最初に行った対策の"決め打ち"が、こうした事業検証過程そのものを阻害している。

そしてさらに、この"決め打ち"がアベノミクスの礼賛にあり、この政策による雇用創出効果が現政権の命脈の全てだという現実をふまえれば、この検証の向こうにいる安倍首相の顔色を必要以上にうかがっている内閣周辺のこわばった雰囲気こそが、「人口減少はどうしたら止まるのか」というこの問題へのアプローチを阻んでいるといえなくもない。

政府自身が最初の"決め打ち"の罠にかかっている。これではPDCAのサイクルなどできない。

PDCAは、チェック(C)をへて、改善(A)し、最初のプラン(P)を変更するところまで踏み込まねばならないものなのに、現在の政府のチェックはただ最初のプランがどこまで達成されたかの確認を行っているのに過ぎない。

ましてその数値で、「これだけやったぞ」と政策の達成度を誇るものになってしまえば(そして東日本大震災からの復興政策では、事実そうなっている。本誌「福島原発事故から7年、復興政策に『異様な変化』が起きている」を参照)、かえって検証そのものが政策を阻害するものになるだろう。

そもそも「人口減少を雇用で解決」という、その図式そのものが誤りだと筆者は考えるが、その点は別に委ねたい。ここでは次の点にのみ絞って議論を進めよう。

人口のPDCAは、もっと適正な形で行わなければならない。KPIを設定し、その進捗をみていけば、人口は自然と維持されるとか、そういうものではない。人口とはもっとデリケートで、進行管理の難しい代物だ。

この点について、すでに各自治体が作成済みである「人口ビジョン」をとりあげて、さらに掘り下げてみたい。