政府は「人口減少」に無関心?地方創生が地方を壊す未来がやってくる

「地方消滅」から4年、何が進んだのか
山下 祐介 プロフィール

そこでは次のように述べられている。

「まち・ひと・しごと総合戦略」では、4つの基本目標を立てて施策を推進してきた。

4つの目標とは次のようなものである。

1. 地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする
2. 地方への新しい人の流れをつくる
3. 若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる
4. 時代にあった地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する

検証チームは、この4つの目標についての成果指標(KPI120件)の達成度を比較しているが、その結論として次のようにのべている。

 

基本目標1、3、4は、施策が一定程度進展している。

しかし基本目標2「地方への新しい人の流れをつくる」については、東京圏への転入超過数が約12万人に上り、事業廃止前よりも一極集中は進んでいて、「現時点では各種施策の効果が十分に発現するに至っていない」。

とはいえこの2も大事なことなので、その達成を引き続き目指すべきと提言されている。

さて、そのKPIの検証表を引用すれば以下の表のようである。読者は違和感を感じないだろうか。

表:まち・ひと・しごと総合戦略KPIの検証結果(2017年)(総合戦略2017改訂版、6〜7頁)
拡大画像表示
註)進捗欄については、本文の説明は次のようになっている。
「(A)目標を達成しているもの及び実績値が当初の値より上昇しているもの(B)現時点では、実績値が(A)以外のもの(C)その他(現時点において統計上実績値の把握が困難なもの等)上記の分類に従うと、KPI 120 件の内訳及び(C)その他を除く割合は、(A)が 85件(87%)、(B)が 13 件(13%)、(C)その他が 22 件である」

まず最大の違和感は、ここでは日本の人口総数についての検証が何もなされていないことだ。人口減少に少しでも歯止めがかかっているのかどうか、それがこの事業の最大の問題であるはずなのに。

そうしたストレートに計るべき指標を避け、4つの基本目標ごとに人口ではないものばかりが選ばれている。

基本目標1「地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする」では、指標はまず「若者雇用創出数(地方)」と「若い世代の正規雇用労働者等の割合」となっている。

そしてその評価を進捗A(目標を達成しているもの及び実績値が当初の値より上昇しているもの)としているが、いやまて。

大切なことは、これらの改善が、人口にどうプラスに働いたかどうかではないか。

事業が進んだかどうかをただチェックするだけにKPIを使っているようだが、そこで終わってしまっては、何のためにこれらの事業をやっているのかわからなくなってしまわないか。

そうした錯綜を端的に示しているのが、次の「女性(25~44歳)の就業率」だ。

これもちょっとまて。

女性の就業率が上がれば出生率は上がるのか。その相関はほんとうにあるのか。女性がより多く就業していれば、子どもを産みやすい環境が整っていない日本の場合、むしろ出生率は下がるのではないか。

同様に、基本目標3「3若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」の検証もおかしなものだ。

ここでは2つめに「第1子出産前後の女性継続就業率」が使用されているが、これがどうして「3若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」ことの指標になるのだろうか。

「出産前後の女性継続就業率」でわかることは、「出産の希望」ではなく、「出産後の就業の希望」をかなえたかどうかではないか。

それでもなお、継続就業率にこだわるのだとすれば、地方創生が目指す希望出生率は1.8(合計特殊出生率)なのだから、その就業継続が第2子出産に結びついたのかまで検証すべきだろう。

そして日本の現状では、第1子で就業を再開した女性は第1子で産むのをやめ、就業を中断した女性の方で第2子を産んでいる可能性も大きかろう。

地方創生は人口減少を問題にしている政策なのだから、継続就業できたかどうかではなく、その10%の向上が、出生にどうプラスの効果をもたらしたかまで検証する必要がある。

でなければ、事業が進捗さえしていれば「合格」ということになってしまう。目的を棚上げし、手段がどれだけ達成されたかで成果を誇るKPI検証は間違っている。