北京大学が女学生の「Me Too」告発を圧殺しようとした事情

学生運動の広がりを恐れているのか
古畑 康雄 プロフィール

「中産階級の幸福」よりも大切なこと

岳さんは悩んだ末、今回の経緯を公にすると決意したと語り、次のように思いをつづっている。

「もし自分がこれ以上声を上げず、『人権擁護などの問題』に関心を持たなかったら、学校側は自分を呼び出すこともせず、家族との関係も元に戻り、再び北京の中産階級の家庭の幸福を手に入れられるだろう。

だがその結果、情報公開、セクハラ防止などの問題を提起することは難しくなる。自分たちの後輩が合法的な権利を得るために、このようなつらい思いをしてほしくないし、次に高岩さんのようなセクハラ被害者が現れた時、沈黙し我慢することはできない」

「私は普通の人間で、普通のことをしただけで、決して英雄や勇士などではない。もし私がそのようにみられるのなら、この時代やこの制度に常識や理屈に外れたところがあまりにも多いのだ」。

 

今回の岳さんの行動について、情報封鎖された中国国内では事件について人々の声は表に出ることはなかった。だが、香港メディア、端伝媒では100を超える次のような読者からの声があった。

「北京大学のこれほど厳しい対応は、(沈陽)教授を守ることよりも、学生の行動を抑え込むのが重点だ。五四運動から六四(天安門事件)まで、大学生は社会運動の先鋒であり、共産党は学生の力を熟知している。(そのため)『独立精神』や『自由な思想』などはスローガンにすぎず、学生から鋭気を奪い、青年の反抗精神を失わせるのが、彼らの真の任務となっている」

「岳昕さんは理にかなったやり方で情報公開をしたのであり、個人的利益からではなく、真相のためにやったのだ。大学側は彼女の決心やソーシャルメディアの力を甘く見たが、圧迫や削除をするほど、人々はそれを知り、岳昕さんの影響を高めるのだ」

岳昕さんが最終的にどのような処分を受けるのか、現時点では明らかではない。中国人の友人は「彼女はあくまで情報公開を求めただけで、共産党に反対したのではないから、それほど大きな処分は受けないはず。万一卒業が取り消しになっても、米国など海外に留学する道がある」と語った。