サイボウズ社長「別姓訴訟」に内在する、深刻な戸籍の「二重氏問題」

「民法上の氏」と「呼称上の氏」とは
井戸 まさえ プロフィール

自民党高市案とは

「夫婦別姓」を巡っては紹介した案以外にも素案が出ている。

日本会議の国会議員懇談会発足当初からのメンバーの一人である高市早苗氏が2010年に自民党法務部会に提出した《高市早苗私案「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」の概要》、またHP上の記載によれば、案の基本は「戸籍上は夫婦親子が同姓であるという現行法を堅持。家族のファミリーネームは残すべきである」である。

さらに立法の目的として、「原則を維持しつつ婚姻前の氏を通称として称する機会を確保するため、戸籍に婚姻前の氏を通称として記載し、又は記録する制度を設け、あわせて、国、地方公共団体、事業者その他公私の団体は婚姻により氏を改めた者が婚姻前の氏を通称として称するために必要な措置を講ずる責務を有すること等について定め、もって婚姻により氏を改めた者が不利益を被ることの防止及び婚姻前の氏の通称使用についての社会全体における統一性の確保に資すること」とした上で、戸籍法の一部改正し、「婚姻前の氏を通称として称しようとする者は、届書にその旨を付記して届け出なければならない」としている。

つまり、高市氏が自民党法務部会に提出した改正案は、あくまで「原則を維持しつつ婚姻前の氏を通称として称する機会を確保」との意味での「通称使用の拡大」の夫婦別姓案であることがわかる。

 

戸籍のシステム他コスト論について

「選択的夫婦別姓」を実現する際のコストについても議論がある。

しかしながら、私はこのコスト論議には与しない。

実際の計量が難しいこともさることながら、そもそも、「人権」や「男女平等」の問題は、「コストがかかるから、やらない」とか、「こっちのほうが安いからこっちにしよう」などという問題ではないからである。

「選択的夫婦別姓」で問われている人権、差別の是正は、コストで図るものではない。

今のセクハラ等の問題も、社会を見渡せば遠因として私たちの暮らしを支えるはずの民法の規定が平等を担保していないことに至るのではないか。

「何が問題かわからない」「そのくらいはいいじゃないか」というセクハラの加害者側の甘えの構造、またパワーハラスメント等も法の下の不平等を放置して来たことと無関係とは思えない。

歪んだ社会の軸を組み直し、多様な「生きる基盤」を創造しなければならない。それには「選択的夫婦別姓」や「嫡出推定制度」、そして、中途半端なまま法改正がなされた「再婚禁止期間」等の家族法の抜本的見直しは急務なのである。