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フェイスブック株価を下落に追い込んだ「ESG投資」の仕組み

東芝、神鋼、パソナ…日本企業も危ない
近年、世界的に本格化してきたのが、「ESG(環境・社会・ガバナンス)」を重視する投資活動。最近では、個人情報の不正流出問題を起こしたフェイスブック社の株価にも大きな影響を与えた。
日本でも広がる「ESG」投資の影響力や企業側がとるべき対策を、米国の投資運用会社で働いた経験があり、『マネーの代理人たち』の著書もある小出・フィッシャー・美奈氏が解説する。

フェイスブックの株が売られた「倫理的」理由

投資業界では「優しいハゲタカ」が今後増えるかもしれない。

最大8700万人という個人情報の不正流出問題に揺れるフェイスブックの株価は、3月の半ばに15%以上下落した。

4月には最高経営責任者(CEO)のザッカーバーグ氏が米議会公聴会に召喚されて証言を行うという事態に発展しその行方が注目されたが、デジタル時代に追いついていない年配議員らの迫力にかける追求をザッカーバーグ氏がそつなくかわし、その後の好業績で株価は急回復した。

公聴会で証言するザッカーバーグ氏/Photo by iStock

とはいえ時価総額が日本円で50兆円規模、スウェーデンとかポーランドのGDPに匹敵する巨大企業だから、一時的にせよこの騒ぎで7兆円以上の株式価値が吹っ飛んだことには違いはない。不祥事というのは高くつくのだ。

フェイスブックの株価調整の背景には、今後の規制強化で成長や利益面に悪影響が出るのではないかという投資家の懸念はもちろんある。

しかし、業績以上に今回注目されたのは、「倫理的投資」の観点から、フェイスブックの個人情報管理をめぐる社会責任が投資家から問われたことである。

データ流出騒ぎが起きてから、フェイスブックは複数の「ESG」格付け機関からダウングレードを喰らい、ESGの高評価企業で構成されるインデックスから外され、ESGを投資基準に組み込む世界の機関投資家から敬遠され、株が売られた。

日本でも広がる「ESG」投資

では、この「ESG」とは何か。

Eは環境(Environment)、Sは社会 (Social)、Gはガバナンス(Governance =企業統治) の頭文字をとったもので、対象企業が環境や社会に配慮しているかどうか、また責任ある企業統治を行なっているかどうかを考慮した上で投資を行おうという、新しい社会的投資のフレームワークである。

 

ESGの世界的な高まりについては、拙著『マネーの代理人たち』でもふれた。

ESGの出発点となった国連責任投資原則(PRI)に署名をした投資機関の数は、PRIのホームページによると昨年末で1700社を超え、ESGに賛同する投資機関によって運用される資産を単純に合計すると、70兆ドル (約7000兆円)にもなる。IMFが推定する世界のGDPの総額が約80兆ドルだから、世界全体の経済規模にも迫る勢いで伸びているのだ。

もうちょっと厳密に、資産を預ける側と預かる側の重複を避けるため、年金や金融機関など「アセットオーナー」と呼ばれる預ける側だけ見ても、400社、10兆ドル規模となる(ただし純粋な「ESGファンド」と言われるものはこの中のごく一部。またPRIの署名基準を満たしていないのに口先賛同した投資機関が200社以上に上ったことが問題となり、昨年からPRIが署名資格を厳格化している)。

ESGはまず欧州の大手投資機関から盛り上がり、次に米国、そして日本を含むアジアなど、世界に拡大した。日本でも我々の国民年金や厚生年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、日本株投資分の3%をESG投資に振り向けて話題になった。

GPIFがこれまでに採用した3つのESG指数には「女性活躍指数」というユニークなインデックスも含まれている。世界最大の年金基金であるGPIFの運用資産は150兆円を超える。日本株のたった3%といっても1兆円の巨大ESGファンドだ。

投資業界は多くの「マネーの代理人たち」が、巨額な他人マネーを動かす場所である。年金や財団などの「アセットオーナー」が投資責任原則に署名をしたら、彼らを顧客とする投資運用会社も、ビジネスに直結するから慌てて署名をする。こうしたドミノ現象により、ESG採択の動きは瞬く間に広がったのである。

今では巨大なESGインデックス投信も続々と登場し、個人投資家にもどんどん、その認知度が上がってきている。

米国のオース(*旧ヤフーが名称変更)による「ヤフー・ファイナンス」のウェッブサイトでも、今年から米国上場会社のESG評価が見られるようになった。