「出世を諦めた女性」は"悪"なのか〜女性登用が生む根深いジレンマ

こうして彼女は管理職を「拒絶」した
奥田 祥子 プロフィール

管理職を拒む背景には、長時間労働や指導的で責任の重い職務の経験・スキル不足など、特に子育てなど家庭の役割をこなしながら働く女性が抱える課題が、解決されず放置されたまま、単に数値目標を達成するためだけに女性を管理職に押し上げようとする、つまり数合わせの女性登用がある。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2015年に公表した「女性管理職の育成・登用に関する調査」(正社員の男女3000人対象)によると、管理職に就いていない社員のうち、管理職(課長クラス以上)を目指している割合は、男性43.0%に対し、女性は12.9%と低い水準だった。

管理職を目指さない理由(複数回答)として、女性は管理職になると、「ストレスが増えるため」が47.2%で最も多く、次いで「責任が増えるため」(37.4%)、「自分には管理職が向いていないため」(34.1%)、「家庭(プライベート)との両立が難しいため」(27.1%)と続いた。

子どもの有無別で、女性が管理職を目指さない理由として「家庭(プライベート)との両立が難しいため」と回答した割合を見ると、子どものいる女性では34.9%と、子どものいない女性(24.1%)に比べて約1.5倍に上り、管理職への昇進意欲にブレーキをかける家庭との両立では、子育てが大きな比重を占めていることがわかった。

 

子育て女性を「普通」と考えよう

本来、すべての従業員の長時間労働を是正するなど、働き方が抜本的に改革されれば、子育て中の女性が時短勤務や残業の免除などで他の社員と同程度の時間働くことができないことは、それほどハンディとはならないだろう。

そうなれば、旧来の男性型の長時間の働き方をノーマルとして、例外的にマミートラックを設けるという現状ではなく、マミートラックが特別ではなく通常のノーマルな存在となるだろう。子育てしながら働く女性が増え続ければ、例外的なマミートラックは定員オーバーとなり、この対応が迫られるのは必至だ。

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ただ、現実問題として、長時間労働が完全に是正されるにはまだ相当の時間がかかると予想される。

このため、育児など家庭との両立で労働時間、つまり仕事の量を減らさざるを得ない時期に、労働の質を低下させることなく、指導的役割の経験も含めて資質・能力を醸成し、いかにキャリアを発展させていくか。そのための適正な人材育成や人事評価、職務配置が企業に今、早急に求められている。

そして、数合わせの女性登用ではなく、管理職に就くかどうか、マミートラックに乗るかどうか、も含め、女性たち自らが望む職場内のポジション、働き方を認め、働きやすい職場環境、雇用制度を整えていくことが不可欠だ。働きやすさが働きがいを生み、ひいては生産性の向上にもつながるのである。