これでわかる「憲法9条」の本当の論点〜なぜいま「改正」なのか?

解釈が曖昧だとムダが多い
篠田 英朗 プロフィール

解釈を確定させるための改憲が必要

私は、現行9条でも、自衛権の行使は禁止されておらず、国際法に合致した行動をとるための軍隊組織を持つことも禁止されていない、と考えている。

憲法が国際法秩序に合致した平和を目指していることは、憲法前文で説明されている。「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」することが目的だとしている9条は、その前提に立った条項だ。

9条1項は、憲章2条4項の武力行使の一般的禁止と同じである。9条2項における「戦力」(war potential)不保持とは、戦争を目的にした潜在力の不保持である。

「戦争」とは、国際法違反行為である。戦争行為をするための手段は保持しないということは、国際法秩序にそって侵略に対抗するために自衛権を行使する手段を保持するのは合法だということである。

「交戦権(rights of belligerency)」は、現代国際法ですでに否認されている概念である。

9条2項の「交戦権」の否認とは、古い19世紀ヨーロッパの考え方、特にドイツ国法学における国家の基本権の思想などを持ち出して、現代国際法を蹂躙したりすることは二度としない、という宣言である。

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9条は、文言通り、素直に解釈すれば、国際法秩序を遵守する、という趣旨であり、「憲法優越説」で国際法を無視するための条項ではない。

仮に、国際法と調和した本来の日本国憲法の姿を取り戻せれば、つぎはぎだらけの法律を、複雑な仕組みと曖昧な行動で運用する労力が削減され、実行したい政策を円滑に実行できるようになる。

調和している、ということは、無制約であることとは、全然違う。

 

権限の行使にあたっては、自衛権に必要性と均衡性の制約を課す国際法と調和した運用が王道だ。それでむしろ的確かつ綺麗に進められる。

憲法学者の顔色をうかがいながら落としどころとなる制約をその都度こしらえていく労力は、省いた方が望ましい。

ただし、もちろん私のような解釈を憲法学者が採用する可能性はゼロである。とすれば政治家層も躊躇する。そこで私のような者にとっては、改憲を通じて、解釈を確定させることが、最も合理的な判断になる。

イデオロギー対立の構図で判断を先送りにすればするほど、国政の停滞は悪化していく。今のところ、そうなっていく見込みは高い。

だが日本の国情を考えれば、判断は、早ければ早い方がいい。政局をこえて改憲問題を見ていく視点が必要だ。