これでわかる「憲法9条」の本当の論点〜なぜいま「改正」なのか?

解釈が曖昧だとムダが多い
篠田 英朗 プロフィール

改憲に強く反対する団塊の世代

全政党が評価を下げている状態は、日本という国にとって、非常に不幸な状態だ。だがそれは起こってしまっている。

先日、読売新聞の世論調査結果にコメントをする仕事をしたが、世論調査を見ると、改憲に強く反対しているのが、60歳以上、特に70歳以上の団塊の世代であることが示されてくる。

憲法問題に強い関心を抱き、立憲民主党に投票した階層にも重なる。他方、若い世代は、距離をとりながら、改憲をしても別にいいのではないか、といった態度をとっている。

団塊の世代は、仕事からは離れたが、まだ隠居する年齢になっていないため、街頭デモの主力を構成する世代でもある。

人口が多く、購買力もある年配の世代の方が、より短期的な政局がらみで憲法問題に結論を出そうとする傾向があるだろう。改憲問題が、国会外闘争の背景となっている構図は、まだしばらくは、続くのだろう。

しかし残念ながら、その期間が続けば続くほど、全ての政党の信頼感は低下し、日本の国力は疲弊していく。

 

硬直した構図の内側にいる憲法学者たち

数多くの憲法学者の方々が、この構図そのままに、改憲反対と政権批判を繰り返している。

彼らによれば、安倍首相をはじめとする自民党主流の改憲推進派は、改憲が必要な理由を語っていない。従来の政府見解を変えないと言いながら、改憲を提案しているのはおかしい、というわけである(参照「長谷部恭男教授の「憲法学者=知的指導者」論に驚嘆する」)。

ただし主要な憲法学者の方々は、中立的な立場から淡々とそのように述べているわけではない。

実際には、明確に改憲反対の主張を繰り返しており、自衛隊の合憲性を明記することにも反対している。憲法に規定がないから、自衛隊の活動を制限できる、などと主張している。

さらには「軍事権」なる謎の概念を考案して、日本国憲法に「軍事権」が存在しているべきだったのに存在していないのは「消去」されているからなので、それは存在してはいけないのだ、といったナゾナゾのような話をする方もいる(参照「三権分立は世界で日本だけ?画期的な日本の憲法学通説」)。

憲法学者が、憲法典上の根拠がない制限のほうがいい、と主張しているのは、かなり異常な光景ではないか。しかし、日本の憲法学の異常性に、多くの日本人は慣れてしまっており、驚かない。

9条に関しては改憲を支持する人の数の方が多いとはいえ、世論は全般的に迷っている。したがって、堅実で党派色のないバランスの取れた議論を求めているはずだ。

だが、憲法学者も、それを提供しない、という不幸な状態が続いてしまっている。