クイズです。明るいニュースと暗いニュース、よく読まれるのはどっち?

「人工知能」で見抜く読者の心理
掛谷 英紀 プロフィール

読者が共有したいもの

先のクイズのリストは、全ての記事を対象にしているので、種々の話題が混じっている中で得られた分析結果です。

次に、dot.(現AERA dot.)の記事には音楽、天気、芸能、政治など多数のカテゴリがあるのですが、中でも生活情報の記事に限定して、平均閲覧時間が長い記事と短い記事の特徴を、同じ分析手法で調べてみました。そこで再度クイズです。

【問題】次のリストは、生活情報の記事に限定して、閲覧時間の長い記事と短い記事のそれぞれに特徴的な言葉をまとめたものです。どちらが閲覧時間の長い記事によく含まれる言葉でしょうか。

このリストのXには「優しい」「元気」「うれしい」といった明るい言葉、Yには「疲れる」「づらい」「困る」「怒る」といった不平不満に関係する言葉が多く含まれます。

このどちらがよく読まれるかは、さきほどのクイズの答えから簡単に類推できるでしょう。Yが平均閲覧時間の長い記事によく含まれる言葉です。

読者は、他人の幸せには関心が薄く、誰かが不平不満を持っている話題を詳しく知りたい、あるいは自分の不平不満を誰かと共有したいという傾向があることが分かります。

他人の不幸は蜜の味?

私は、最近テレビというものをほとんど見ません。暗いニュースを張り切って伝えたり、人を繰り返し批判したり、とにかく見ていて気分の悪くなることばかりだからです。

ところが、今回の調査結果からは、実はそれは多くの視聴者が望んでいるからやっている可能性が高いことが示唆されます。ネガティブな情報を繰り返し流した方が視聴率をとれるので、テレビはビジネスに徹した結果、公共の電波は暗いニュースで占拠されてしまっているというわけです。

研究で予想しない結果が出たときは、新発見に嬉しくなるのが普通ですが、今回ばかりは発見された事実に暗い気持ちにさせられました。

 

もちろん、この調査結果を一般化しすぎるのは多少危険があります。記事のジャンル別で閲覧時間の長短の比率を求めると、政治が77 : 23、経済総合が75 : 25なのに対し、芸能が63 : 37、生活情報が50 : 50、音楽が16 : 84となっており、dot.の読者は政治経済に関する興味が相対的に非常に高いことが分かります。

これは、一般市民の平均とはかなりずれているものと思われます。世の中に不満を持っている人ほど政治への関心が高いという傾向があるので、たとえば芸能やスポーツのニュースが中心に読まれるサイトの場合は、ここで紹介した分析結果とは違った傾向が見られる可能性はあります。

このテーマについては今後対象を広げて詳細な分析をしていく必要がありそうです。調査は調査として客観的に進めていく予定ですが、一個人としては、「他人の不幸は蜜の味」という価値観が蔓延した社会ではなく、「他人の幸せを素直に喜べる」社会に少しでも近づいてほしいと願っています。