朝鮮半島の平和条約は「日本の不幸」になるという悲劇的な現実

隣に核経済大国ができることの意味とは
河東 哲夫 プロフィール

誰と誰がどう対立しているのか

もともと韓国、日本、米国はなぜ、北朝鮮に敵対してきたのか? 敵対を続ける理由はあるのか? 

北朝鮮と日米韓が友好関係を結べば、北朝鮮も米国に政権を倒される心配がなくなって核武装は不要になるし、拉致問題、その他多くの懸案も解決されるだろう。

戦前、日本に併合されていた朝鮮半島を、冷戦時代のソ連と米国が奪い合って戦争となり、中国軍も引き込んで半島を2つに裂いてしまった。これまでの対立は、その行きがかりが、冷戦後も残っているからなのである。

韓国と北朝鮮の間は1953年以降、停戦状態にあるだけで平和条約が結ばれていない。だから、韓国は米軍と共同演習を繰り返して、北朝鮮の脅しに対抗してきた。

しかし中国、ロシア帝国、日本の間で朝鮮半島が奪い合いになった20世紀初頭と違って、現在はかなり強力な国家が2つも存在しているので、本来は彼ら自身が和解すれば、対立構造は氷解するだろう。

以上が、ものごとの基本的な背景だとするなら、朝鮮半島をめぐる主要なプレーヤーの思惑は何か。韓国、北朝鮮の両首脳が「これだけは絶対確保したい」と思うものは何かというと、それは統一云々などよりまず、自分達の存在を脅かされないことだろう。

 

目標は生き残ることだから

特に経済的に弱い北朝鮮の金正恩委員長は、米国が「レジーム・チェンジ」を煽動することを極度に恐れているし、毎年の米韓共同軍事演習では本当に命の危険を感じてか、いつも居場所をくらます。米軍のステルス軍用機はいつでも北朝鮮に入ってきて、平壌などを襲撃できるからである。

金正恩は、1989年の東欧崩壊で、ルーマニアのチャウシェスク大統領夫妻が無惨に銃殺された情景は知らないかもしれないが、2011年リビアのカダフィ大佐が血まみれで惨殺された場面は目に焼き付けていることだろう。

政権を倒されないようにするための、脅しの道具としての核ミサイルは、目下不可欠のものなのだ。史上、核ミサイル保持を諦めて撤廃、あるいは差し出した例は、南アフリカ 、そしてソ連崩壊後のウクライナとカザフスタンだけである。

北朝鮮の核開発は、ソ連が崩壊した1991年以降、急速に進展している。当時、社会主義国が軒並み崩壊、中国までが市場経済化、対外開放に乗り出す中で、北朝鮮は大変な孤立感、そして危機感を持った。

韓国の経済力はロシアをしのぎつつあり、それまでの同盟国ロシア、中国、そして東欧諸国は争うように韓国との国交を樹立して、北朝鮮を上から目線で見るようになっていたのである。

そこで北朝鮮は、生活に困窮した旧ソ連の核・ミサイル技術者を招請し、他方自国の学生、エンジニアをロシアに送りだして、核、ミサイル開発に拍車をかけた。

独立・存続維持は、韓国の国家目標でもある。北朝鮮、米国、中国、日本に対するこの国の国論は1つにまとまっていないが、少なくとも統一を急がないという点では世論は一致している。ドイツ統一の時、それが経済的にどんなに大変だったかを、よく知っているからである。